CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

フロントローディング設計アプローチが問題解決の切り札(11月8日の続き・最終回)



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では如何に手を打てばこれらの問題を解消できるかだが、具体的には取組み度合いの濃淡はあるものの、結論的には、かねがね私が提唱しているフロントローディング設計アプローチが、これらの問題を解決する切り札である。

例えば先々週、本来なら把握していて然るべき自社製品の、機械のあるべき姿を、設計者各々が自分なりにでも良いから把握出来ていない点、さらに各要素機器における、物理の法則に則った機械・機器の原理原則が把握できていない、若しくは継承出来ていない点を挙げた。

これらの解消手段は、物事を筋道立てて論理的に思考できる習慣を定着させ、機械の、あるべき姿と原理原則を明確化して、体系的に整理蓄積することで、部門として事業としての固有技術を高めるしかない。

具体的には、以下に列記するような取組みや態勢作りを、対象製造業には提案した。

  1. 技術の棚卸しを徹底して、既に保有する技術の共有化を徹底すると共に、根拠不明確、メカニズムや原理の不明確技術の解明・体系化を行い、これらを共有化する。


  2. 先人(創業〜現役ベテラン迄)が培った固有技術を発掘し、整理体系して、共有化を徹底する。


  3. 上記結果をベースに、機械のあるべき姿と原理原則を明確化して、物理の法則に則った論理的な設計アプローチができる態勢を組織として確立する。


  4. 上記結果を用いて、論理的な思考を駆使して、フロントローディング設計を担える人材の育成を図る。


  5. など

技術の棚卸しなど箇々の取組み方法や効果などは、本ホームページの各所に記載してあるので説明は省略する(リンクを参照願いたい、但し会員以外閲覧できないリンクもありますので会員以外の方はご容赦願いたい)。



続いて先週は、機械のあるべき姿や原理原則が解っていないためもあり、とにかくあらゆる設計アプローチが、作って、壊して(問題を出して)、考えよう(根拠レス闇雲アプローチ)の問題点を挙げた。

この問題を解消するためには、物に生じている現象を的確に把握して、科学的に問題を解決してゆく文化を植え付けるしかあるまい。そしてこの文化が定着できると、現象が生じてからアクションを取るのではなく、先手を打って、物に生じるであろう現象を予測できるようになる。

“作って壊して考えよう”の文化は、かつては多くの製造業で取られていた商品開発の平均的なスタイルで、30年前なら、重機械の一部業種を除き、我が国製造業のほとんどが取っていたアプローチスタイルである。

しかし時代とともに多くの製造業は、問題を事前に予見・予測する、商品開発方法へとそのスタイルを改めている。何故なら問題を事前に予見・予測するための道具立てが30年前から格段に進化したからだ。

ところが対象製造業では、この世の中の変化に追従することもせず、しかも、機械のあるべき姿・原理原則が不在(恐らくどこかで霧散してしまったのだろう)の中で、旧態依然とした開発スタイルを取っていた。これでは対競合、競争力が落ちてゆくのもあたり前であり、早急な改革を行う必要があった。

そして対象製造業には、これらの解消手段として、以下に列記する取組みを提案した。

  1. FS(フィジビリティースタディ)やこまめなDR(デザインレビュ)実施により、問題を前倒しで予見・予測して、手戻・モグラ叩きを根絶する。その結果、大幅な開発期間の短縮と、開発品質の向上を図ることが出来る設計態勢を確立する。


  2. 予測型の設計スタイルを確立し手戻・モグラ叩き堂々巡りの根絶に結びつけるために、統計手法及び解析技術の適正導入をして、その活用強化で予測型設計を実現するとともに、予測型設計を行うにあたりその精度を左右する、機械各要素機能の原理・原則解明体系化をする。あわせて設計思考展開(DPD)手法を導入することにより、これらの取組みが論理的且つ最大効率で施行できる態勢を確立する。


  3. 設計着手段階から量産出図までの各段階で、根拠ある定量的な価値基準による、先手を打った設計審査(DR、ミニDR)を実施して、量産垂直立上が出来る開発態勢を確立する。量産段階でコスト起因の手戻り、品質起因の手戻り、製造都合による手戻りなどを根絶して、しっかり稼げて、後手間(クレーム処理&対策費)ゼロの商品開発態勢を実現する目的。


  4. など