一方アプローチ2の解説部分で、対象機械の原理原則やメカニズムの解明に、シミュレーション技術の活用は重要な役割を果たすと述べた。その話題に若干触れる。
筆者が様々な製造業で実施している現状診断で、共通して問題視する重要な問題点がある。診断対象部署の稼ぎ頭商品である開発対象機械の、メカニズムや機械の原理原則を、担当設計者達が解っていない問題だ。当然これらの殆どの製造業では、いずれかの時点(過去)、でこの原理・原則は解明されていたはずだ。しかしその技術が巧く継承されていないのだ。
世の中の工業製品の殆どは、その原理・原則が完全に解明できないにしろ、何らかの形でその原理・原則を設計者達が共有する術を持っている(はずだ)。
このような術がないと、開発する商品ごと、開発した設計者ごとに、考え方が異なる、思想の統一されない製品が送り出されることになるからだ。
また物を作る前に、徹底的に設計品質を追い込んでしまおうと言う、「フロントローディング設計」などは成り立たなくなる。原理・原則の解らない機械で、前もった問題の探求・探索など不可能と言っても過言ではないからだ。
筆者の経験によれば、この機械の原理・原則解明にCAE 等シミュレーション技術が大いに活用できる。特に上記2つのアプローチを組み合わすと、その威力は絶大だ。現に筆者の経験では、これまでいくつもの、極めて複雑でつかみ所のないメカ原理の解明に成功している。
以下にフロントローディング設計に用いられる様々な“ひな型モデル”の例を示す。