一般に、機械製品の設計初期段階では、未だ部品の形状どころか、機械の構造までもが定まらない場合がほとんどだ。しかし対象機械の基本性能や、基本機能をしっかり作り込み、試作以降で問題を起こさない設計を実現するためには、この段階で如何に的確な問題予測と、その潰し込みが行えるかにかかってくる。そして、この段階でCAEツールを用いたシミュレーションを行うには、未だ単なる骨組み状の機械構造しかないところから、その追い込み作業が求められる。
ところがこうした場面で設計者向けCAEツールを適用しようとすると、これらのツールは、3次元形状が無いと全ての作業を始められないため、ここでまず最初のテクニックが必要になる(強いて言うなら)。
漠然とした機械構造や形状の段階で、その機能を満たすために必要な、構造や形状を追い込むシミュレーションを始めるためには、ともかくシミュレーション目的のラフな3次元データを作成するしかない。そして、ここで定義する3次モデルの寸法・幾何拘束は、十分に工夫されたものでなければならない。
何故なら、目的の機能に合致した最適形状になるように、その機械構造を追い込む目的で作られた3次元モデルは、その目的に叶う寸法拘束がなされていないといけないからである。形状寸法をいじる必要が生じる都度、3次元モデルを一から作り直さなければならない様なモデルでは、駄目だと言うことである。
しかし、目的に叶った寸法・幾何拘束を、前もって3次元モデルに定義することは、既に経験則を沢山持つ、技術の変更が伴わないモデルチェンジ設計ならいざ知らず、新しい技術へのチャレンジが伴う場合には、極めて困難な作業になる。対象機械構造が求められる設計機能要件を、洗いざらい把握して、その中から予測できる形状変更のパターンを可能な限り予測して、それらが網羅できるであろう寸法・幾何拘束としなければならないからである。
一方、設計初期段階でシミュレーションを用いる最大のメリットは、そのモデル形状などを時々刻々微妙に変えながら、最適な形状や構造に追い込んで行けるところだ。当然微妙な形状や構造の変さらに手間がかかったのでは、話にならない。
仮にこの段階でのシミュレーションモデルが、梁要素やシェル要素を用いて作られている場合には、その断面形状の追い込みや、板厚の追い込み、微妙な構造の追い込みは極めて容易に叶う。何故なら、その形状テーブルや設計座標を数値的に微妙にいじるだけで、容易に対処する事が出来るからである。
ところが、3次元CADの操作から全てが始まる設計者向けCAEツールの場合は、上記のようなテクニックが使えない限り、極めて面倒くさい対応が必要となる。3次元形状をモデリングした際に定義した寸法や幾何拘束が、適用できない形状変更では、必要が生じる都度、3次元形状の作り直しを余儀なくされる。3次元形状を作り直し、解析の準備処理、解析実行等の一連の操作を繰り返さなければならないからである。