フロントローディング設計を実現するにあたりこのDPD(設計思考展開)手法は極めて重要な役割を果たす。仮想試作・仮想試験に耐えうる対象商品が持つ固有技術の形式知化、対象機械の原理原則の究明、それを元に予測型設計に用いるための、ひな型モデルの確立・検証等のそれぞれの取組で、要の部分をDPD(設計思考展開)が押さえているからだ。
例えば、対象商品が持つ固有技術の形式知化には、過去対象商品の開発に携わったベテラン〜現役設計者達が、その設計作業を進めて行った中で、絶えず直面した様々な課題解決をどの様な思考を持って行ったかを事細かに紐解き、又絶えず発生する設計判断をどの様な根拠・理論で決断していったかを芋蔓式に拾い出すことで、論理的な体系化ができる。そしてこの中からは、根拠不明な点、対象機械のメカニズムが不明な点、押さえるべき狙い値が不明な点などが列挙されてくるはずである。この不明点が実は、アプローチ1で説明した、“現物から特性&傾向を読みとる”の読みとるべきポイントになる。
又次に説明するアプローチ3で 行う“ひな型モデル”を構築して行く上でも重要な役割を果たす。
“ひな型モデル” は、目的の機械が持つメカ挙動を論理的に予測出来るモデルでなければならない訳で、そのためには対象機械の挙動を予測しようとしている部位のメカニズムが、完全に解明できていなければならない。
このためには、アプローチ1で説明した、“現物から特性&傾向を読みとる”取組と、DPD(設計思考展開)手法を用いた“対象製品のあるべき姿・原理原則”からの追い込み作業が連動して行わなければならない。
さらにアプローチ3で説明するが、シミュレーション技術の活用も、この原理原則やメカニズムの解明に重要な役割を果たす。
DPD(設計思考展開)手法は、その利用場所を設計部署に限定した場合でも、上記外にも沢山のメリットがある。表2にそのメリットの一部を列記するので参照願いたい。
尚、DPD(設計思考展開)手法の詳細やその活用法については、筆者の著書「設計者の頭の中を整理する「設計思考展開」入門」日刊工業新聞社刊、に詳しく述べてあるので参照願いたい。