CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

設計外注先設計者の評価方法は


■質問■

<前略>

突き詰めると弊社設計者の能力に関わる話、という落ちになってしまうと思うのですが、ここ数年設計外注を行った装置や部品での品質問題が絶えません。

弊社のルールでは、設計外注は、あくまでも担当する設計者、若しくは設計チームの責任で、設計内容の追込み、設計結果の検証を行うことを大前提として、“丸投げ”は絶対に許さない形が規定されております。

しかし実態としては、ベテランの外注先(個人のベテラン設計受託先若しくはベテランを多く抱える外注企業)に対して、設計目的と要求仕様を示しただけで、それ以降は作業をを丸投げ状態にしてしまい、設計結果の受け取り後も、明らかにザルチェックと思われる状況が頻発しております。

確かにこのベテラン勢の中には、極めて高い能力を持ち、過去ざまざまな成功体験を持つ方もいるのですが、それはほんの一握りで、多くはただ経験が長いのと、一応言われたことだけは期限内に処理できるだけの平凡な設計者達です。

弊社としては、優れた外注先は戦力として彼らの能力を提供して貰う形で、全く頼りきってきた経緯があり、彼らに代わる戦力を育成できていない実態もあり、今後も彼らに頼らざるを得ません。

しかし一方、これら優秀なベテラン勢の高年齢化が進み、徐々に引退という形で戦力から外れつつあり、早急に欠如してゆく戦力を補充して行く必要性があります。

そこで、現在我々が考えておりますのは、外注先の会社に署属する若手の設計者達の能力を正確に把握して、これら引退してゆくベテランの代りを育てることが出来ないかと言うことです。併せて、上記した外注設計に起因する品質問題を根絶すべく、外注設計者達の能力を正確に把握して、それぞれに与える仕事の内容や、指示チェック内容のランク付けなどを行おうと考えております。

そのような経緯で、外注設計者達の能力評価を的確に行う方法はないかと、様々な文献やインターネットを調べたところ、貴社が提唱され、機械設計誌や貴ホームページで紹介されておられます、人材ポテンシャル評価方法が利用できるのではないかと思い、問い合わせをさせて頂きました。

<後略>

■回答■

まずお問い合わせの評価方法は、元々設計者達を戦略的に育成したり、的確な人材配置をするためのバックデータ取りを目的としておりますので、お問い合わせの取組にも十分に活用できると思います。実際私が直接支援している先でも、外注設計協力企業やサプライヤーの設計者達に対する能力評価を行った例もあります。

しかしその目的はあくまでも“戦略的な設計者育成”であり、“的確な設計人材配置”ですので、貴社が意図している物とは、若干異なります。

恐らく私共がご支援申し上げ、どのような評価視点や評価項目で評価を行うか、その際のヒアリングはどのようなプロセスで行うかなどを、策定支援させて頂き、貴社目論見を実現されることをお薦め致します。

尚老婆心ながら、これまで200部署に迫る設計部署の現状診断を行ってきた、私の目から見て、貴社における固有技術や設計ノウハウの継承について、大きな疑念を感じます。

ある懇意にさせて頂いております大手製造業で、定年退職したベテラン設計者しか会得できていない重要機能装置の設計を、退職後もその設計者に頼っていた例がありました。その退職設計者が元気なうちは良かったのですが、突然の病気に倒れたときに、予期されていたとはいえ、その装置を用いる予定の新製品の開発が、悉く停止する事態となってしまったわけです。

そこで緊急に私が呼び出され、設計思考展開手法を使って、リバースエンジニアリング的に、その固有技術を探索する取組を行ったのですが、これには膨大な手間と費用が費やされました。それにも拘わらず、論理的に繋がらないところや、定量的な不明点、判断基準の取り方など、不明点が山積する程度にしかまとめ上げられませんでした。

しかし開発が停止している状態ですので、不完全とは分かっていても、やむを得ずこの中途半端な結果を持って該当装置の設計を行い、何とか急場を凌いだのですが、出来映えは不十分な結果に終わりました。

幸いなことに一年弱で、そのベテラン設計者の方は、障害が残り直接の設計作業は無理ですが、口頭レベルでは十分設計指示が出来る状態に回復しました。そこで、本人抜きで類推作成した「設計思考展開票」を見て貰いましたところ、山積されていた不明点は悉く解消できた経験があります。

これまで貴社が外注設計に頼ってきた機械装置や部品が、貴社製品の中でたいした役割を果たしておらず、仮にノウハウを持った外注設計者が根絶してしまっても、同業他社の設計者を引き抜いてきたり、それらが抱える外注設計者に委託することで、何ら支障無くビジネスが継続できる状態であるのなら、私の懸念は単なる要らぬお節介でしょう。

しかし、何らかの問題が生じたり、重大な事態を招く可能性があるときには、私の懸念を真剣に受け止めてください。

上記例で示した自社OB設計者でさえ、このような問題が生ずるわけで、これを全く別人格の外部の外注設計者に頼るなど、とんでもない考え違いの、貴社文化だと思います。

この辺りは私の現状診断を受診頂ければ、問題なのか否かがはっきり致しますし、今後何をすればよいかも明確になります。