CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

設計技術力を早急に回復させたい





■質問■

<前略>

貴ホームページの「10年あまりの外注設計依存で低下した設計技術力を短期間で回復したい」 「設計技術力低下解消や技術継承の失敗回復には設計思考展開は効果があるか?」及び、設計思考展開関係の解説を拝読して問い合わせをさせて頂きました。

弊社でも2009年に質問された製造業様と同じような状況にあります。そしてお恥ずかしいことに、10年近く前から何とか設計技術力を回復出来ないかと様々な模索を行って参りましたが、はかばかしい成果を得られておりません。

具体的には、問題を生じさせない手法として品質工学、高度な発想を手助けする手法としてTRIZを導入いたしました。そしてそれぞれのコンサルタントの手を借りて、集中教育から始まり、実践トライへと手法定着を行って参ったのですが、設計品質の向上やダントツ製品の開発などという側面から冷静に評価し直すと、これまで費やした手間や費用から考えて、とても成果が上がったとは言えません。

そこで何かこの閉塞状態を打開する手はないかと、探し回った結果、貴社が提唱されている設計思考展開手法に行き着いた次第です。

一連の解説を拝読して、使えそうだと言う事は分かったのですが、もう少し具体的に何をどのように狙ってこの手法を活用してゆくのかをご説明頂けますと幸いです。

<後略>

■回答■

まず私どもが、DPD(設計思考展開)手法を用いて設計技術力の強化に取り組む際の、基本的な考え方は以下になります。

支援先の製造業に、DPD(設計思考展開)手法を導入・活用して貰うことにより、物事を筋道立てて、論理的に思考できる習慣を対象企業内に定着させる。

そしてその結果、対象機械(製品)の、あるべき姿と原理原則を明確化し(当然根拠も)、平均以上のメンバならフルに活用できるようにして、部門として事業としての固有技術を高める。

さらには、一連の取組を行うことにより、マーケッティング力・商品企画力の確立を担うスタッフの育成や、フロントローディング設計が担える設計者育成をも実現することを目論んでおります。

もう少し詳しく言うと、機械(製品の各機能装置毎)のあるべき姿と原理原則を、既に退職してしまった先人達の手も借りながら、その根拠も明らかにした上で、明確・体系化して、物理の法則に則った論理的な設計アプローチができる態勢を、組織として確立することです。

さらに同時に、フロントローディング設計を担う事が出来る設計者を数多く育成し、競合他社に圧倒的な差別化がはかれる、強靱な製品開発力を身につけた製造業を実現することです。

そしてそれを叶えるために、以下のような取組を集中的に行います。

  1. 技術の棚卸しの徹底で、的確で外しのない新規技術開発と技術の共有化を図り、競合他社を圧倒できる開発力を確立する。
  2. 先人(創業〜現役ベテラン迄)が培った固有技術を発掘し、整理体系・共有化して、競合他社を圧倒できる開発力を確立する。このために、継承すべき固有技術、ノウハウなどを、探索、引き出し、収集、整理して共有化できる仕組みを用意する。
  3. 各々に欠落する技術を明確化し、機会を与え、フロントローディング設計を担える人材の育成を図る事で、競合他社を圧倒できる開発力を確立する。このために、固有技術として蓄積されてきた技術の的確継承実現し全体の設計技術向上に結びつける取組、自己研鑽を当たり前とする文化を創り、設計者個々が持つ技術の底上げを図る取組、若手設計者を中心に、各自年度一アイテム以上の試験研究テーマを与え、新技術を取得できる機会を作るなどの取組を行う。


補足)

@@さんのお問い合わせ文面から推察すると、まず手法ありきの取組スタイルを感じます。

確かに設計技術力向上などの取組を、短期間で成し遂げようとしたときに、有効な手法を学び、それを巧く使って目的を達成しようとすることは、少なくありません。

しかし、これまで私が診てきた多くの製造業では、本来の取組目的(この場合は設計技術力の向上)をいつの間にか忘れて、手法教育や定着を目的視してしまうところが多すぎました。

私自身も時々「「設計思考展開」の教育をお願いします」と言われ、教育だけを渋々引き受けるケースが、少なからずあります。そして、その後の実践に私がお付き合いできなかった製造業では、はっきり言って私どもにお支払い頂いた費用は、無駄になったと思います。

「品質工学」や「TRIZ」は、決して劣った手法ではありません。巧く使えれば、設計技術力向上に対しての、強力な武器になります。時には私自身、これらの手法を支援先にお薦めして、活用することもあります。要は使い方次第と言うことです。この辺りをお忘れ無く。