＜前略＞
弊社でもこれまで経験をしたことが無いような大幅な売り上げ不振と、急激な収益低下を受け、大幅な経費削減の取組を行っております。
そしてその一環として、長年弊社の商品開発に貢献してくれていた派遣外注設計の契約を本年度３月末を持って契約更新を行わない決定がなされております。前回の不況時に大幅に削減された設計者を穴埋めする形で次々と補充を行い、昨年度末には、プロパー設計者の人数を超える派遣設計者が在籍しておりました。
一方５年ほど前から、日々の設計作業の中核をこれらの外注設計者が担い、プロパー設計者達は企画・調整業務を専ら行い、直接図面を描かない傾向が強まっており、設計技術力の低下を危惧はしつつも、押し寄せる開発業務をこなしてゆくために、目をつぶっておる状況が続いておりました。
また昨年末、それまで決まっていた開発計画の大幅見直しを行い、必要設計工数を半減できる目処が付いたため、管理部門から強く要求されていた、外注設計者の撤廃を決断に至った次第です。
しかし、現場の課長クラスからは、「彼らを切った場合、まともな設計作業を行える若手・中堅設計者がおらず、自分たちが一線に立つしかないが、自分たちの代わり（マネージメント業務）を部長がやってくれますか」と一様に悲鳴が上がっており、若手設計者達の設計技術力強化を短期間で行わざるを得ない状況に陥っております。
課長達には「お前らが若手育成をサボって来たからだろう・・・、自分たちで何とかしろ！」と言いたいところを、グッと押さえて、外注設計者達に帰属してしまった継承技術と設計ノウハウを引出し、それを若手プロパー設計者達に伝承する目的で、中核業務を担ってきた外注設計者に対して、３月末までに、これまでの業務は全て中断させ、設計ノウハウや設計の感処をマニュアル作りに専念させる事と、課長クラスには、直近５年以内の開発案件を、図面を見ながら外注設計者達から、その設計の意図や狙いを聞き取る作業を指示致しました。
正確には、「課長達が中心になって継承技術を体系化して、設計ノウハウや設計の感処のマニュアル化を行え」という指示を出したのですが、課長達の意見を聞いて、ムダだろうなと思いながらの上記妥協策としての指示でした。
そしてまもなく３月末になろうとしておりますが、予測していた事ですがはかばかしい結果には至れておりません。
恐らくメ○○○○などの派遣元からの指示もあるのだと思えますが、見た目のボリュームは膨大ですが、枝葉末節な項目を羅列したべからず集を「私が持っている設計ノウハウの全てを引っ張り出しました」と堂々と提出して参りますし、課長達のヒアリングでは「前の図面がそうなっていましたからそのまま真似しました」「担当者から指示が出たのでその通りやりました」「特に深くは考えておりませんでした」など、糠に釘状態でこれと言って得られた成果はございませんでした。
私が外注派遣元の管理者や外注設計の当事者に立場を変えたとき、同じような対応を行うでしょうから、当然の結果と言えるでしょう。しかし次のステップに進むためには、課長達が言うことが駄目だと言うことを経験させる必要があったため、覚悟しての遠回りでした。
さて先生へのご質問ですが、このような状況に陥っている弊社の設計を、短期間（可能なら２年以内）で、少なくとも先の不況以前の設計技術力を持った設計部署に復活させることが、先生のご支援を持って可能でしょうか。ご検討の程宜しくお願い致します。
＜後略＞
かかる費用や貴社が必要とする手間などの正確なところはおじゃまさせて頂き、詳しくお話を伺ってからでないと断言はできませんが、貴社ホームページで拝見する範囲の製品なら、皆さんさえ真剣に取り組んで頂けるなら２年あれば何とかなると思います。恐らく、私が提唱致しております「設計思考展開」を活用頂くことで、手間と根気は必要ですが必ず巧く行くと思います。
具体的なアプローチ方法としては、「設計思考展開」を用いて貴社製品の“あるべき姿”を設計特性値、設計判断レベルにまで落とし込み体系化することです。そうすると、対象製品の設計のあるべき構造や形が形式知化できるだけではなく、それぞれの製品に織り込まれた設計者達の設計意図までを含んだ形式知化が叶います。
詳しくは、私の著書「設計者の頭の中を整理する「設計思考展開」入門」をお読み下さい。
尚参考に、2007年問題に先立って、各社で実施したベテラン設計者のノウハウ（暗黙知）を形式知化する取組のフロー図など資料を添付致します。
