CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

機械のあるべき姿・原理原則が不在では、まともな設計など出来る訳がない




先日ある製造業に、一日がかりの単発コンサルテーションを行ってきたので、その概要や問題点を紹介する。

通常は、私が行ったコンサルテーション内容を、このように公表することは、絶対に無い。しかし本件は、“皆さん巧く3次元CADを活用できていますか?”で紹介した件と同様に、本ホームページを始め雑誌や講演などを含めて、その内容を公表しても良いという条件で、廉価な料金で引き受けた話なので、心おきなく皆様に紹介させて頂く。

当然上記件と同様に、何処の企業か絶対に判らない内容にすることが条件のため、機構や構造、また発生した不具合などを、漠然とした表現で記載せざるを得ず、解りづらい点は、ご容赦いただきたい。

さて、この訪問先は、大手製造業の、主に一般向け大型機械を、その主力商品とする事業部隊である。

設計者達に対するヒアリングを通して、強く感じ、驚かされたことは、本来なら把握していて然るべき、自社製品の機械のあるべき姿を、自分なりにでも良いから把握出来ていない点であった。

さらに各要素機器(作業機・動力伝達系等)における、物理の法則に則った、機械・機器の原理原則が把握できていない、若しくは継承出来ていないと言う点であった。

当該事業部で、モデルチェンジを行う都度発生する様々な品質不良の原因は、まさにここにあると確信した。

具体的には、*********************************************************************************************************************************************。

更に、私が機械のあるべき姿・原理原則が不在と言い切る理由は、対象製品の命である作業機の機構特性や、騒音・熱バランスなどのあるべき姿を、現役設計者達が論理的且つ科学的に理解できていない点であった。

例えばある機種で、********************************************************************************************を動かす必要があった。

担当設計者は、***************************が変わることは承知していたようで(当然だが)、機構の設計手順書に従い、淡々と各種設計検討と設計作業を続け、ピボット位置を平行に移動させれば問題なしという結論で、試作図面出図に至った。

ところがこの設計手順書がくせ者で、いざ試作機で作業をさせてみると、モデルチェンジ前とは異なる作業特性になってしまい、作業性が悪いという評価を下されたと言うことだ。驚くことにここ数年、同様な問題が多発していたようである。

実はこの機械を知るベテランエンジニア達に聞いてみると、***************、その操作性や作業性に微妙に影響を与えることを知っており、彼らの設計ではこれまで問題を起こしてこなかった。

しかし問題の手順書には、この部分が欠落しており、微妙な経験則の伝承が行われていなかった。現役設計者達は、くだんの手順書を金科玉条の如く信じて、上記のような不具合を生じさせてしまったようだ。

恐らくかつてのこの技術部門には、一家言あるエンジニアが幾人もいて、それぞれの持論を戦わせていたに違いない。自分たちの扱う機械の原理原則をめいめいで追求し、あるべき姿に落とし込んでいたに違いない。そしてこのエンジニア達が残した遺産が、くだんの手順書であろう。

しかし本来ならば、それ以降このあるべき姿の根拠の伝承や、さらなる追求を、弛まなく続けて来なければならなかったにもかかわらず、いずれかの時点で断絶させてしまったようである。

本例以外にも、ヒアリングでは、製品開発途上における、現在発生している様々な問題には、機械のあるべき姿が理解されており、それを的確に考慮した設計がなされ、評価確認がされていれば、恐らく起こらなかったであろう問題点を多数把握した。

それ故、「機械のあるべき姿が、論理的科学的に理解できていない」と言う結論に、行き着いた訳である。

機械製品には、必ず物理の法則に則った、機構や機械要素の原理原則が存在する。「**装置は生き物だ」と言う発言を、ヒアリングの中で少なからず聞いたが、とんでもない話だ。機械の中で起こっている全ての事象は、遍く科学的に解明できる事象である。

この解明の度合いが、企業力の差と、私は理解している。



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 次に続く