CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

3次元CADのバージョンを固定しても他社に後れを取ることは本当にないのか?




■質問■

貴ホームページの「3次元CADのメンテナンスコスト削減には、バージョン凍結も一つの選択肢」での「故に、これからしばらくの間エンハンスメント(ソフトのバージョンアップ)を行わなくても、設計の道具として遜色なく活用してゆけると判断しております。と言うか、現時点でソフトが持つパフォーマンスに対して、エンハンスメント契約を結んでバージョンアップを続けていてもいなくても、5〜10年後時点でそれ程設計の生産性に大きな差が出ないと考えております。」

「Windows XPのサポートが終わるがCAD・CAE・設計事務用途のPCをどうすべきか?」での「全ての3次元CADに当てはまる話ではありませんが、少なくともメジャーな3次元CADの半分以上は、ほぼ完成の域に到達できていると私は評価しております。」などを拝読して、問い合わせをさせて頂きました。

それぞれのコラムで先生は、上記のように述べられておりますが、本当に3DCADのバージョンを固定してしまって大丈夫なのでしょうか。他社に後れを取ることは本当にないのでしょうか。

極めて初歩的な質問で申し訳ありませんが、御回答の程宜しくお願い申し上げます。

■回答■

上記コラムでも述べたように、現在我が国で入手できるメジャーな3次元CADは、既に完成の域に到達しております。

3次元製図ツールとしては”という条件付きですが、「市場に出回っている3次元CADのその多くは、既に実用レベルに到達している」と宣言したのは、2000年代前半のことです。

また「一部の業種に用いる以外は、その機能的に全く遜色のないレベルに到達している。」と宣言したのも同じ頃です。

さらに、会員の方しかお読み頂けないのですが、2009年12月に3編構成で掲載した「3次元CADの動向と将来展望」では、各種CADの製品毎機能差についても、次のように述べています。

「その拙さ度合いの大小の差こそあれ、それぞれのCADには、競合するCADと比較して劣っている部分が少なからずある。これまでユーザは、この拙さ度合いを隈無く把握して、それぞれが自社の設計文化や設計スタイルに取って支障が無い事を確認し、さらに良い面が自社に向いていることを確認した上で、CADを選択する事が常道であった(実態はこの段階で失敗しているケースが驚くほど多いが)。そしてこの5年間におけるCADの進化は、その手間が若干省けるようになったと言うことである。」

と言うことで、設計支援ツール、設計意図具象化ツールとしての3次元CADは、皆さんが現在お使いになられているバージョンで、十分にその機能を果たしてくれると考えて誤りはありません。

ですから、これらのCADを動かすハードウエアー環境さえ、維持し続けさえ出来れば、3次元CADのバージョンを固定して少なくとも10年程度は使い続けて何ら問題は生じないと、私は考えております。

またハードウエアーの維持やCAD使用上の技術サポートについては、「Windows XPのサポートが終わるがCAD・CAE・設計事務用途のPCをどうすべきか?」に記述してありますので、参考にしてください。

しかし一点だけ、日本中、いや世界中のユーザが、CADのメンテナンス契約を停止し、新製品も購入しないとなると、CAD開発元や販社は消滅してしまうことになります。この部分での何らかの保険を掛けておくことは必須です。

どのような対処を行なえばよいかは、ご依頼頂けましたら私どものビジネスとして、ご支援申し上げますので、お声掛け下さい。