<前略>
3月12日に掲載された御貴殿の記事を拝読して、お問い合わせさせて頂きます。
弊社も3月12日の企業さん同様、今後の厳しい国際企業競争に勝ち残ってゆくための人材力に強く不安を抱いております。
バブル崩壊以降、弊社でもご多分に漏れず、技術とは何か、物作りとは何か、を良く理解せず、ただ帳簿面だけで経営判断を行う欧米流経営スタイルが、経営中枢を占めておりました。このため、優秀な技術を持った人材も、ただの歯車の一つに過ぎないような扱いを続け、頭数合わせのリストラ要員に追い込んでみたり、折角育ちかけた若手設計者を悉く営業現場に放出するなど、技術を継承させる意図を、全く感じさせない経営を続けてまいりました。
さらに固定費の削減を求める余り、上記したリストラや営業転出で不足になった設計工数を、外注や派遣の技術者(技術者もどき)に求め続けたため、本来主力で活躍すべき20歳代後半から30歳代前半のプロパー設計者がほとんどいない状況に陥っております。
一方相対的に役に立つ設計者を派遣して来ている大手派遣会社は、我々の弱みをすっかり見透かして、現在の製品開発を中心的に担っている派遣設計者の単価アップを半期単位で要求し続け、このため固定費は低レベルで抑えているのですが、数年前までは、経費が鰻登りで増加する始末になっておりました。
そして一昨年のリーマンショックで、弊社は再び赤字陥落となり、自己保身を図った帳簿面経営者達のなりふり構わぬリストラ経営が吹き荒れることになり、私の前任者などは、外注・派遣経費の大幅削減命令に楯突いた結果、孫会社に左遷される様な最悪な状況に陥っておりました。
しかし幸いにして、製造業のあるべき姿に一家言ある相談役(20年以上前の社長)や、弊社の将来を憂えるOB達、さらには古くからの大株主達から弊社の将来に対する危惧の声が上り、様々な働きかけが、私を含め帳簿面重視の経営者達とは、一線を画していた役員や幹部達に行われる様になり、その結果昨年の役員改選では、彼らが一掃されました。
このような経緯により昨夏より、物作り人材力強化、特に製品開発に関わる設計者をはじめとする技術者達の技術レベルの底上げの取組を行って参りました。
しかし、20年近い歳月により崩壊・荒廃した継承技術や固有技術は、簡単に復活できる物ではなく、また3月12日の企業さん同様、若手の技術者達を育成できる人材がうまく手当てできない有様で、途方にくれ、何か良い参考にできる情報はないかとインターネット検索を行っていたところ御貴殿の記事に遭遇できた次第です。
そこでご質問ですが、詳しくはご来社頂き詳細をご覧頂いてからで構いませんが、弊社のような状況から御貴殿のお力を借り、短期間で弊社の人材力を復活させることが可能なことでしょうか。3月13日の企業さんへの御回答でも、難しいことは重々承知し理解しておりますが、藁をも縋る思いでお問い合わせさせて頂きました。宜しくご回答頂けますと幸いです。
なお、費用概要などもお知らせ頂けますと助かります。
<後略>
3月12日の記事をお読み頂いておりますので、重複する話は割愛して、ご質問にお答え致します。まず「短期間で弊社の人材力を復活させることが可能なことでしょうか」は、貴社にお邪魔させて頂き、下記致しますような診断を行ってからでないと、厳密には申せませんが、ご提供頂いた状況から察するに、自覚されておりますように、限りなく無理だと思います。
ご希望される貴社全体の人材力底上げには、受け入れる側の人材確保、人材そのもののキャパシティ、伝承・教育する側の人材確保、継承技術や固有技術の整理体系化などの難しさを考えると、やはりそれなりの期間を覚悟して頂かないと無理だと考えます。
ですから、貴社全体の人材力底上げが叶うまでの間、的確な製品(商品)開発を滞りなく行いながら、並居る競合メーカ達に太刀打してゆく為には、何らかの方法で、その足り無さをカバーする方策を、同時並行で取る必要があります。
しかし幸いに、貴社には恐らく今でも利用可能な、他社には無い様々な宝があり、また今回の取組を行うに当たり、都合の良い環境に置かれていると思います。ですから、これらの宝を巧く活用することで、人材力が育つまでの繋ぎが充分に行なえるのではないかと読んでおります。
私が知るかつて(20年近く前)の貴社製品の機械としての完成度の高さは、尊敬に値する物がありました。これから察するに、今現在在籍されているかはともかくとして、かつては多くのスーパーエンジニア達が、貴社の製品開発や物作りを担っていたと推察致します。当時主戦力だったであろう30歳台前後の方々でしたら、リストラされていない限り、未だ社内のどこかにおられるのではないでしょうか。また彼らを引っ張っていたであろう、当時40歳代の方々も、再雇用などで、未だ一部は社内に残っておられるでしょうし、退社されていても貴社と関係がこじれていない限り、これからの取組に引っ張り出すことが可能と考えます。この方々が、上記した宝の最たる物です。
このように申しますと、「既に現役引退した、老人組を引っ張り出してどうするのだ」と異論が出ると思います。しかし、貴社の主力の製品群は、長い歴史の上に成り立っている製品です。目先での大きな変化はありましたが、機械としての根本部分では、この20年で極端な進化はなかったと理解致します。と言うことは、一世を風靡した貴社製品群を世に送り出し続けていた当時、中心で活躍したスーパーエンジニア達のスキルが、今でも充分に生かせると考えるからです。
また2007年問題を受け、私どもが様々な客先で行った、ベテラン設計者や技術者達が持つ、固有技術の引出・体系化作業の経験では、本当によい仕事をしてきた人たちは、30年前40年前に担当した仕事でも、しっかり覚えていることを確認しております。
図面や資料が無くても重要なポイントはしっかり覚えておりますし、図面や資料や現物を前にしますと、まるで一週間前の出来事を喋るが如く、蕩々と当時何を考え、何に悩み、何を根拠に判断を下したかを、多くの方々が喋ってくれました。
また今回のお問い合わせの取組を行うに際して、必須で求められる技術の中で、貴社には恐らく無いのだが、私どもが提供できる技術があります。
その一つ目は、複数の方々の経験や知恵を芋づる式に引き出し、同時に“可視化”“整理体系化”できる手法です。これが、私が提唱している「設計思考展開」手法です。
人材力が育つまでの間、新商品開発の企画立案から構想設計、詳細設計から量産移行に至るまでの間、対象製品に一家言のある社内メンバーが可能な限り集まり、「設計思考展開」を用いて、企画案・設計案の妥当性検証を行うことで、参加者全員が持つ経験や知恵の寄せ集めや、これから育てようとする若手への継承すべき技術の伝達などを行うのです。
その方法の詳細は、拙著をお読み頂きたいのですが、私が類推する貴社の状況からは、うって付けの手法と考えます。当然手法の使い始めの期間は、私が司会を務めながら実際の作業に関わって参ります。
もう一つは、CAE等に代表される、この20年の間に急激に進んだ、設計支援技術の活用です。さすがにこのような技術は、一部の方々を除いてベテラン勢には余り経験の無い技術の筈です。
一方私どもは、私どものビジネスのタイトルにもありますよう、この部分での高度活用で、売りのスキルを持っております。ですからシミュレーション技術や3次元CAD活用などのデジタル物作り技術に限らず、計測技術、様々なITツールの活用、ITシステムの構築などで、貴社に無い部分を充分にカバーできると考えております。
尚CAEの分野では、貴社には学会などに良く顔出しをされていた、ご高名な方々が居ったと思います。しかし、私が当時拝聴拝読した限りの、彼らの視点やアプローチ内容は、今回の取組では全く役に立たないと考えております。ですから彼らの技術は、仮に私がご支援申し上げる場合を想定した場合に、現時点では全く期待しておりません。
いずれにしろ一度お邪魔させて頂き、皆さんのご希望をしっかりお聞きした上で、再度の提案をさせて頂きたいと考えます。
アクション内容 | 所用期間 | 貴社対象者 | |
---|---|---|---|
1 | 貴社の現状(概要・希望)把握 | 1日程度 | 全役員及び開発・物作・営業キーマン |
2 | 支援計画概略の提示と費用見積の提出 | ||
3 | 貴社の現状診断(人材力・開発力・物作力・営業力等) | 10日〜 | 全部門関係者 |
4 | 診断結果の報告と取組計画案の提示 | 1日 | 全部門関係者 |
5 | 実行計画の策定・関係者啓蒙 | 3ヶ月程度 | 全役員及び計画推進チーム(キーマン中心に) |
6 | 個別人材力評価・計画に協力頂くスーパーエンジニア選考、並行して「設計思考展開」による上記提案取組開始 | 3ヶ月程度 | 推進チーム |
7 | 人材育成カルテ作成・個別育成計画策定 | 3ヶ月 | 評価対象者・推進チーム |
8 | 計画に従った取組の遂行 | 数年 | 全部門関係者 |
アクション内容 | おおよその費用 | |
---|---|---|
1 | 貴社の現状(概要・希望)把握 | 無料 |
2 | 支援計画概略の提示と費用見積の提出 | 無料 |
3 | 貴社の現状診断(人材力・開発力・物作力・営業力等) | 2000万円〜 |
4 | 診断結果の報告と取組計画案の提示 | 3に含む |
5 | 実行計画の策定・関係者啓蒙 | 500万円〜 |
6 | 個別人材力評価・計画に協力頂くスーパーエンジニア選考、並行して「設計思考展開」による上記提案取組開始 | 3000万円〜 |
7 | 人材育成カルテ作成・個別育成計画策定 | 1000万円〜 |
8 | 計画に従った取組の遂行 | 半期1000万円程度 |