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有泉徹の年頭所感2017(最終回)



(1月20日に戻る)

それ以外の閣僚で、我が国に影響を与えそうな人物を列記しておく。

まず司法長官に指名されたジョセフ・セッションは、長年検事を務めた後1996年から2008年まで上院議員を務めている。トランプと極めて近い思想の持ち主で、後に冗談だった言い訳はするが「KKKに共感する」発言もあり、不法移民排除やTPP反対などを主導的に行っていた。

大統領選初期にトランプは、中国と日本を一括りにしたような日本叩きを展開していた。しかし日本関係者がジョセフ・セッション等に接触して、「同盟国を悪し様に言うのは如何な物か」と進言を行った結果、トランプの日本叩きがなりを潜めたという話が、肥田美佐子氏などからレポートされている。

同盟関係などを、冷静に真実を判断できる人物なのであろう。

直接は我が国と関係はないのだが、運輸長官に指名されたレイン・チャオ(趙小蘭)は、台北生まれの親台湾の女性である。父親は海運会社Foremost Groupの会長である(趙錫成は上海交通大学で江沢民と同級生で共産党革命で台湾に脱出)。

レイン・チャオは、ハーバード大学ビジネススクールでMBA取得後、様々な仕事を経験下の、1986年連邦政府入りをしている。89年ブッシュ政権下で運輸副長官、2001年にはアジア系アメリカ人の女性としてとして初めて労働長官として入閣している。

本年10月には、父親と共に台湾の蔡英文総統を表敬訪問をしており、トランプが中国の反発を尻目に蔡総統と電話会談を実現する露払いを果たしている。

恐らくトランプ政権は、中国を切り捨てた後、その後釜として経済を中心に台湾との結びつきを強化しようとしていると見られ、この政策は我が国に大きな影響を与えるに違いない。



結論

大統領選挙中にトランプが行った我が国も含めた対外国への暴言は、やはり選挙用の発言であったと結論付けることができる。要するに受けを狙ったビートたけしや太田光の暴言と同類な物と言うことだ。その証拠に、功労賞を除いて適材適所な人材をしっかり配置している。

また就任直後矢継ぎ早に出している大統領令は、選挙公約を早速具現化しているポーズと見る。上記した適材適所の人材達と充分にすりあわせを行って上で、まともな結論に至ると読んでいる。

しかし、政治的にはある程度の米国孤立主義、IS殲滅、中国の勝手を緩さない方向性は明確であり、経済的には徹底した中国叩きを考えているに違いない。

恐らく安部総理と真っ先に面会したことも含め、ナバロの言う「ぶれない同盟関係」対日政策軸になることは間違いなかろう。

経済的にはTPP不参加の動き(早速大統領令を出してきた)を取るであろうが、TPPは日本主導での環太平洋自由貿易協定にすれば良いわけだし、2国間FTAを積極的に受入れば良い話だ。

特に中流以下の白人層を支持基盤としているトランプ政権からは、これまでのような理不尽な農産物や工業製品交易以外の無理難題要求を出す必然性が無く、既にあらゆる工業製品が無関税状態にある我が国にとっては、都合がよい方向にしか纏まりようが無いという結論になる。

ロビー活動を通じて、自動車部品や大型ピックアップトラックなどの、米国側関税撤廃には抵抗して来るであろうが、少なくともトランプ政権の現閣僚メンバーでは、それほど真剣に取り合わないのではないだろうか。

しかし上記話は、米国が我が国との二国間協定を持ちかけてきて、我が国が協議のテーブルに乗った場合の話で、我が国から米国に対する輸出の殆どを占めている工業製品は、関税を殆ど撤廃しているため、我が国から米国側の工業製品関税を撤廃させる要求しかなく、協議そのものが成立し得ない。わざわざ「自国の関税を撤廃するから協議に乗ってくれ」等と言ってくる訳が無いからだ。

彼らが協定協議を求めてくるのは、これまで通り“農産物”“工業製品以外”であろう。このように考えると、我が国はとぼけていればよいわけで、少なくとも本稿の本題である“我が国製造業”に対する影響は全くないと理解している。