CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

有泉さんの考える設計改革のあるべき姿は



■質問■

<前略>

これまで様々な講演会やメディアで、各所における設計改革の成果が報告されておりますが、どうもしっくり致しません。何故なら、設計変更の件数が半減したとか、開発期間が半減できたとか(とても重要な話ですがこれに費やした設計工数などの言及が無い)、定量的に見えて決して定量ではない観測値を用いての我田引水的な成果発表だからです。

そこで有泉さんにお尋ねしたいのですが、有泉さんの考える設計改革のあるべき姿は、どのような姿であるとお考えでしょうか。

<後略>

■回答■

極めて禅問答的なご質問で、返答に窮するところがありますが、私が目指している究極の設計改革は、「その改革の結果により、少なくとも対象製品の売り上げは倍増、製品毎の粗利5倍増が実現できることだ」と常々各所で申しております。

このためにはまず、確実に売れて稼げる商品企画が必須であり、一切の滞りを生じさせない製品開発・量産立上げも必須となります。さらに、商品出荷後の市場クレームを一切生じさせない設計品質と的確な製品開発も必須となります。

商品企画がでたらめだと、市場に受け入れられない、競合に淘汰される商品をマーケットに垂れ流すことになり、稼げるビジネスには結びつきません。さらに開発途上で企画内容の駄目さ加減に気づいた場合、必然的に開発仕様の修正が入ります。

しかしこの開発途上における開発仕様の変更は、一切の滞りを犯さない製品開発には致命的な障害となります。何故ならこの段階で設計行為は、原点に戻っての基本設計からのやり直しを余儀なくされるからです。

さらに、開発納期を優先した、やっつけ仕事でお茶を濁そうとした場合には、基本設計との齟齬が生じて、開発途上における手戻り後戻りが頻発することになります。

そしてその結果、量産突入後も問題を垂れ流し、市場出荷後もクレームを出しまくる、製品開発で終わることになってしまいます。

一方、自社の開発技術力やものづくり能力、調達能力を無視した、無い物ねだりの商品企画であった場合には、当然のこととして、開発納期に間に合わない中途半端な製品開発しか出来ず、いざ量産に突入しようとしても、うまく作れない、部品が調達できないと言う泥沼に陥ってしまうことになります。

多くの場合、この過程で様々な妥協をしながら商品出荷に結びつけることが常ですが、結果として市場に受け入れられない商品性の製品になってしまったり、市場クレームを多発する製品となってしまいます。

さらに一切の滞りを生じさせない製品開発・量産立上げも重要で、非科学的な“作って”“壊して”“考えよう”的なアプローチでは、開発の手戻り後戻りを頻発させ、開発期間の遅延のみならず、開発効率も一向に良くならないことになります。また商品出荷後のクレーム多発の原因になります。

さらに、製品開発段階で、ものづくりの都合を、的確且つ漏れなく織り込むことが出来ていないと、生産準備段階で大きな滞りを生じさせてしまいます。結果、商品出荷時期を遅延させ、事業利益の莫大な損害を与えることになるのです。

と言うことで、私はFS(フィジビリティースタディー)、フロントローディング設計、技術の棚卸し、人材の棚卸し、設計思考展開などの様々な手法を提唱して、このとてつもなく難しい課題をクリアーするための取組を、この20年来各所で行って参りました。



<参考>

有泉さんが定義する“良い設計”とは何ですか?
有泉さんの定義する製造業のあるべき姿をお教え下さい