<前略>
と言うことでご貴殿のご支援を賜ろうと考えております。
一方一部の検討メンバーから、ご貴殿の「彼の設計に対する価値観と、我々が考えている物が、食い違っていたのでは、時間と金の浪費に陥る危険性が高い、前もって彼が考える「良い設計」とは何かをお聞きした上で判断しよう」と言う意見が出され、結論としてお問い合わせをさせていただいた次第です。
漠然とした質問で申し訳ありませんが、有泉さんが考える「良い設計」とは何かを、是非お聞かせください。
<後略>
私の定義している“良い設計”とは、基本的には、私が各所で述べている、下記製造業のあるべき姿の中で強く要求しております、「“旬でよく売れ稼げるる商品”を常に開発し続ける必要があります。要するに全世界の顧客ニーズにマッチした、安全で高品質且つ適正価格の製品を、より短期間且つ低コストに開発できる実力を持ち、常に安定した商品開発と製品供給が叶うことです。」を実現できることだと考えております。
すなわち、“旬でよく売れ稼げるる商品”を手戻り・後戻りを犯すことなく、最短期間で開発でき、垂直立ち上げで量産移管ができ、市場流通後も一切の市場クレームを発生させないような設計です。
しかしこれを個々の設計者の責任で実現しようとしても現実的ではありません。私はこのような設計力を備えた設計部署であれば良いと考えております。
そしてこの20年来私が取り組んできた“設計改革”への取り組みは、このような考え方に基づき、設計者育成から始まり、様々な手だてを講じながら、少しでも上記した、設計力を持つ設計部署へと、変化してもらう取り組みを行って参りました。
以上が私の定義する“良い設計”ですが、設計工学的な視点で捉えると、目的の製品開発にあたり、市場が要求する機能(性能・操作性・快適性・安全性・経済性など)、製造業として要求する機能(コスト、生産性、輸送性、廃棄性など)、社会が要求する機能(低(非)公害、廃棄性、など)を、漏れなく、最適に設計できることだと言えるでしょ。
参考;私が定義する21世紀を勝ち抜くことができる我が国製造業のあるべき姿
21世紀を勝ち抜く製造業に課せられた使命は、そのものづくりを通じ、社会正義に反することなく、適正な利益を上げ、株主に適正な配当を行う事にあると考えます。利益の分配に際しては、その利益を上げるために身を粉にして働いた従業員に対しても、応分の還元(分け前)がなされることは当然です。さらに納税の義務は基より、企業活動を行って行く上で、協調関係にある社会への適正還元も忘れてはなりません。
そしてこれらの責務を各製造業が果たすためには、“旬でよく売れ稼げるる商品”を常に開発し続ける必要があります。要するに全世界の顧客ニーズにマッチした、安全で高品質且つ適正価格の製品を、より短期間且つ低コストに開発できる実力を持ち、常に安定した商品開発と製品供給が叶うことです。そしてその結果、我が国製造業が潤い、株主が潤い、従業員が潤い、関係者が潤い、国民全体が潤う構図を実現できる事が我が国製造業が目指すべき姿とも言えるでしょう。
さらに、ますます厳しさを増すグローバル競争の中で、我が国製造業が勝ち抜くためには、強靱な体力(開発力・生産力・販売力)を付ける事が必須で求められます。世界中の顧客に喜んで購入・使用いただける、高性能・高品質・低価格な製品を投入し続け、しっかり稼ぎ続けることができる体力です。
このためには、生み出した適正利益の中から、将来(5年〜15年先)を目指した的確な先行投資(先端技術の仕込み・優秀な人材の確保育成・工場用地や先端設備などの確保など)を行うとともに、ともすれば崩壊しようとしている自分たちの足下(商品・製品開発力の低下=設計力の低下)を、しっかり固めることが最優先で求められていると考えます。
尚従業員の雇用形態についての私の考え方は、終身雇用を是と致します。特に知的作業の集合体である商品設計・開発・さらには物作りの勘所は、それを担う人材如何でその体力に大きく差が生じます。
しかし、業績貢献と連動しない年功序列には賛同できません。少なくとも“働かない人間”“仕事を作り出す人間”“周囲の業務の足を引っ張る人間は”利益追求を目的とする民間企業としては不要な人間(人材ではない)です。このような人間にまで闇雲に応分以上の賃金を与え続けたり、在社年数だけでポジションを与えるような、愚かな習慣は容認致しません。