<前略>
弊社の製品開発現場が抱える課題についてご教授頂ければ幸いです。
全く恥ずかしいことですが、弊社における製品開発の現状は、先生が各所で述べておられます、手戻り、後戻り、モグラ叩きの繰り返しで、一向にその生産性が上がりません。さらに生産性が悪いだけに止まらず、設計品質も悪化傾向にあり、製品出荷後の市場クレームが以前に比べて大幅に増加しております。
なぜこのような状況に陥ってしまったかは、弊社の経営戦略上やむを得ない事情で、これまで製品開発を高品質に支えてくれたベテラン勢を、大挙して海外拠点へと転出させざるを得なくなってしまったためです。
当然我々としては、製造業とし最優先すべき開発力が、大幅低下することをあげて反対したのですが、数字至上主義の現経営中枢に逆らうことができず、このような状況に陥ることを承知で、彼らの転出を苦渋の選択で受け入れた経緯があります。
後進を計画的に育ててこなかった、自業自得の結末だと、簡単に斬られてしまうかもしれませんが、各所でご経験豊富な先生でしたら、弊社の苦境を救って頂けるのではないかと、お問い合わせさせて頂きました。
尚私共が扱っております製品は、弊社ホームページ**事業部の製品案内をご参照下さい。7〜15名程度のチームで、常時10〜20件の開発が行われております。
<後略>
貴社がお問い合わせの問題解消に、これまでどのような取組を行ってきて、その結果はどうなったのかを、まずはお聞きしないと断定的な助言は出来ませんが、まずはご自身で認識されておられますように、「後進を計画的に育ててこなかった、自業自得の結末」であることは間違いないと思います。
ところがこの人材育成の問題は、一朝一夕で高いレベルの人材に育て上げることは、まず不可能で、地道に計画的に育ててゆく必要があります。具体的な育て方は、日刊工業新聞社刊「機械設計」誌、昨年の4月号「特集 設計・開発力を強靱化する、勝ち抜くための設計者・技術者育成の考え方と実践」に詳しく解説してありますので参照ください。
しかし製品開発の非効率や質低下の問題を、手をこまねいて放置していたのでは、国内競合メーカどころか、韓国や中国勢に、商品力(製品性能&品質に止まらず価格やサービス力も含めた商品が持つ総合力)を越されてしまうことは必定です。
と言うことは、人材育成は根気よく行うことは当然なこととして、併せて別な形で早急な対策を打つ必要があります。
私のこれまでの経験では、特に製品開発初期段階の設計の質(開発仕様の追込みを含めて)を、事業に関わる全スタッフの頭脳(知識・経験・知恵など)を結集して、徹底且つ論理的に、追い込んでゆく取組をまずお薦め致します。
この取組を私はFS(フィジビリティースタディ)と呼び、手戻り、後戻り、モグラ叩きを起こさない、できあがった製品が市場クレームを犯さない、稼げる製品となるよう、設計初期段階の徹底且つ緻密な追込みを各所で行って頂いております。
詳しくは、弊社ホームページ2012年2月24日「FS(フィジビリティースタディ)についてもう少し詳しく説明ください・・その1〜最終回全6回」を参照下さい。
さらに開発途上でも、私の提唱するフロントローディング設計を採用頂き、事業に関わる全頭脳を結集した先手を打ったスタディと、漏れのないチェック態勢で、手戻り、後戻り、モグラ叩きの発生を抑えて頂いております。