CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

40年前の商品開発技術に安住した体質では、負け組転落は必定(その1)




はじめに

割合息の長い機械製品を、その主力商品とする製造業に、単発コンサルテーションを行ってきたので、その問題点の概要を紹介する。

会員諸氏が所属する企業で、これ程の問題を抱えているところはないと思うが、歴史の長い製造業ほど程度の差こそあれ、本例のような問題を抱えていることがあるので、改めて自社の状況を見直されることをお薦めする。

尚以前も述べたが、通常私が行ったコンサルテーション内容を、このように公表することは、絶対に無い。しかし本件は、本ホームページを始め雑誌や講演などを含めて、その内容を公表しても良いという条件で、廉価な料金で引き受けた話なので、心おきなく皆様に紹介させて頂く。当然何処の企業かは、絶対に判らない内容にすることが条件だが。



当日指摘した問題点1  40年前に培った***技術から未だに進化・脱却できない体質



本例製造業の***技術は、40年前に培われて、その殆どが確立された技術と診えた。恐らく超人的なスーパーエンジニアが、その礎を築いたのであろうが、40年前に確立した技術を、深く疑うこともなく生真面目に(悪く言うと後生大事に)守りながらそれ以降の開発を行ってきたと診た。

しかしこれらも、システマティクな商品企画から生まれた物ではなく、その当時の顧客からの要求を受けつつ、不具合点を解消しつつ***技術の基盤を確立してきたと診た。 

該当製造業に対するヒアリングでは、世の中の変化に追従した顧客ニーズの変化や、新しい客層に追従した***技術のメンテナンスを行っているかの確認を、色々の切り口で行った。ストレートに「変化に伴ったアップデートをしていますか」と聞けば、殆ど誰でも「ハイ」の答えを返すことが想定されるので、それとは気づかれない切り口や、実際に行った設計アプローチの根拠などを通しての把握方法を用いた。

結果としては、殆ど見直しが行われず、驚くことに最近開発を行った、全くカテゴリの異なる新規製品の開発にも、改めてのマーケットサーべーや、商品のあるべき姿の追込みなどを行うこともなく、従来からの手法・経験則の延長上での、派生商品的な扱いでの開発が行われていた。

40年前の***とそれ程大きくはニーズが変わっていないであろう、息の長い主力製品でも、使う側の世代交代により、その使われ方は大きな変化がおきているはずだが、その辺りも全く無頓着であった。



当日指摘した問題点2 “作って”“壊して”“考えよう”の開発体制がなぜか容認されている体質



 該当製造業の設計組織の体質的な問題には、昔なら許された設計アプローチかもしれないが、今これをやっていたのでは、会社がつぶれてしまう設計アプローチの文化があった。要するに直感に基づいた場当たり的な設計スタイルだ。「KKDで設計して何が悪い」とベテランの方々には、居直られる典型的な設計スタイルだ。

KKD(勘と経験と度胸)とは、主に設計者がそれまで経験してきた成功や失敗の体験に基づき、自分が設計している製品に起こるであろう危険を前もって察知したり、高度な設計判断を要する場面で、論理的にその結論を導き出すに至らなくても、ある方向性を決断する場合に行われる設計者の行為を指す。

そしてこの行為が優秀な設計者の道具として用いられると、究極の設計技術になり得る場合がある。しかし優秀な設計者といえども、大きな確率で失敗を犯す危険性を絶えず孕んでいる。

そしてこれらの行為は、容易に設計標準にまとめ上げたり、設計書に筋道たててその論理展開内容を記述出来る程には、設計者自身がその論理展開のプロセスを正確に把握できていなかったり、数々の判断根拠を論理立てて示す事が出来ない行為でもある。

それでも、優秀な設計者達だけがこのような設計アプローチを行っているのであれば、まだ設計の生産性を低下させる原因になることはないだろう。優秀な設計者とは、例えば「本田宗一郎」の様な開発エンジニアを指す。そして40年前、多くの製造業における設計部署では、このような優秀な設計者達が跋扈し、精力的な商品開発を遂行し我が国の高度成長を支えていたわけである。

ところが、この究極の設計技術とも言えるKKDの弱点は、能力の低い設計者に用いられると単なるでたらめになってしまうところに、大きな問題がある。

そして対象製造業では、若い設計者達に、ぼろくそに非難されているベテラン設計者がいた。「理にかなわない場当たり的な対策を、経験を振りかざして強引に押し通し、挙げ句の果てに失敗し、何度も失敗を繰り返している」そうであった。

そして見せて貰った開発時における工数推移には、明らかに異常工数発生の事実が認められた。単に開発マネージメント力の低さだけではなく、「作って・壊して・考えようの体質」その原因の一部となっていることは明らかであった。

(2014年3月28日に続く・・・3月28日まで読めません)
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