CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

PDMを使い設計出図を省力化したいが、古い生産系システムがネックになり出来ない、何か良い手はないか?





■質問■

<前略>

弊社では、10年ほど前から進捗中の設計データ管理や、関連情報の管理をPDMを用いて行っております。しかし、生産系の在来システム都合で、図面術図段階におけるマスターBOM投入は、生産系のシステムに接続をして、一々設計者が投入作業を行っております。

専ら若手の設計者が投入作業を行うのですが、チェック修正は各装置担当の中堅設計者達が行わなければならず、それでなくても忙しい彼らに、過大な負担を掛けております。

PDMが本格稼働をした時点から、生産系のシステムを管理する情報管理部門と折衝しているのですが、なかなかうまく行きません。

彼らの言い分では、「生産系のシステムは、40年近く前に出来たシステムで、今その全貌が分かる人間が、社内にも開発に携わった業者側にもおらず、下手にいじると大変なことになる。UNIXのシステムを導入した20年前、RDBを核としたシステムに作り直そうとしたのだけれど、その時点で既に過去が分かる人間がおらず、それまで用いてきたシステムを、リバースエンジニアリングで解明して、新たなシステムとするには、膨大な費用と期間が掛ると言うことで、上層部にも了解を貰えず頓挫した経緯がある。」とのことです。

ですから、EXCELなどのスプレッドシートをカット&ペーストでローカル処理する機能さえをも、頑なに拒まれ続けております。

しかし我々としてもこの状態に手をこまねいているわけにも行かず、何か良い手はないかと、様々な知見を求めて、調べておりましたところ、先生に行き着いた次第です。

もし良い方法があれば先生にご支援を仰ぎたいと考えておりますが、何か用方法を先生はお持ちでしょうか。またご支援を仰ぐ際、費用は如何ほどでしょうか。

<後略>

■回答■

我が国製造業におけるIT活用は、40年以上前に遡ります。早い製造業では、40年以上前、工場の生産管理や、給与計算などを合理化する目的で、コンピュータの採用が始まっておりました。そして多くの製造業は、当時の貧しいコンピュータ環境の中で、より多くの役割を、コンピュータに果たさせようと、数々の工夫を行っていました。

当然、その主な目的は、工場管理のために必要とされる、多くの伝票処理作業の合理化であり、給与計算などの事務処理の合理化でした。表現を変えると、製造業が、その生産活動を行って行く上で必須となる、膨大な事務処理・伝票処理などの、あらゆるルーティンワークの合理化にほかなりません。

そして、これらのシステムに連動する形で、設計部署にもIT化(当時はEDP化と言った)の圧力は強まり、その図面目録(BOM)管理、設計変更管理などのIT化が行われるようになりました。

しかし、これらのシステムは、あくまでも生産管理システム(M−BOM)を、中心としたシステムであり、その目的は、設計部署における製品開発作業が終了した後の、生産管理や製造業務の効率化に置かれておりました。このため当時のシステムでは、設計部署の都合など、ほとんど考慮されないシステムである場合が殆どです。

私自身が35年前に経験したEDP化のプロジェクトでは、当時の貧しいコンピュータパワーを持って、いかに多くのデータを短時間に処理するかに、最大の優先度がおかれ、設計部署の都合などは、最も低いプライオリティに置かれておりました。私が所属していた事業所には、当時国内製造業としては、最高クラスのコンピュータが備えられていたにもかかわらずです。

幸にして、FEMなどの別分野で、コンピュータに関わっていた私が、たまたま設計側代表の立場で拘わったこともあり、そのプロジェクトでは、極端な生産側主導にならず、設計部署にとっての最悪なシステムになることは、なんとか回避できたと思いましたが、本音では不満たらたらの結果でした。

そして、技術士事務所を開業以来、20年余り、“現状診断”などの場面を通じ、様々な製造業における、このあたりの実態を把握いたしました。そして、多くの製造業の物づくりに拘わるITシステムは、貴社同様に、旧態膳とした、黎明期に構築されたITシステムを、その根底に引きずっておりました。

またその引きずり度合いが、規模が小さくなればなるほど強く、早急に再構築を実施するよう各所で強く要求して参りました。しかしその資金力や、人材力面で余裕がないこれらの企業では、なかなか手が付けられず、不便を承知で使い続けている実態がありました。恐らく貴社もこの状態と理解致しました。

お問い合わせの良い方法はただ一つ、生産システムを含めて、全てを再構築することです。当然生産システムは、現在用いることが出来る、最新のITテクノロジをフルに活用した、高効率且つ将来に向けて柔軟性が高いシステムへになるよう、心がける必要があります。

詳しくは「改めて振り返る・・設計情報管理のあり方」の連載全て及び「有泉さんの言う「次世代の生産システム」とは?(2011年3月4日の続き)」をお読み下さい。

費用は、貴社の詳しい状況も分からない現時点では、何とも言いようがありません。貴社規模の売上高を持つ製造業に対して過去行った支援では、私どもに頂く費用は、5千万円を超えました。貴社の場合には、製品構造も複雑で、部品点数も多い製品を扱っておられますので、間違いなくこれ以上になると思います。