CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

フロントローディング設計態勢を短期間で整えるには


態勢立上げは関係者の意識改革次第で短期間も可能だが、実効を享受出来る迄には保有する技術ポテンシャルで雲泥の差が出る


■質問■

<前略>

弊社でも今期よりフロントローディング設計態勢を整える取組みを始めました。インターネットや書物で参考になる情報はないかと探し回ったところ、先生に行き着きました。

特に貴ホームページのフロントローディング設計のススメは、非常に参考になり、また先進的な製造業では、20年近く前からこのような取組みに着手していることを知り、弊社のアンテナ不足と、遅れた状態に深く反省を致しました。

さて、弊社のこのような状況からの脱却を目指し、フロントローディング設計態勢を短期間で整えようと考えているのですが、なにぶん全く経験のない我々としては、何から手を付ければよいかがよく分かりません。

先生が発信されている情報から、取り組むべき内容を拾い上げて見たのですが、弊社製品のメカニズム及びその原理の把握から、これまで蓄積してきた固有技術・継承技術の体系化・形式知化、さらには予測に耐える雛形モデルの構築、ロジカルな思考を進める設計文化の構築など、何れも一朝一夕では物に出来ない取組み項目があげられ、どこからどのように手を付ければよいのか途方に暮れている状況です。

またフィジビリティースタディなどに見られる、関係部署全体を巻き込んだ体制作りなど、我々設計部署だけに止まらない取組みも必要となり、この面からも困難が予測されます。

恐らく先生に質問をすると、「これら全てを計画立てて、一つ一つ根気よく片づけてゆけ」と言われてしまいそうですが、あえて質問をさせて頂きます。

短期間でフロントローディング設計態勢を立上げ、最短でその効果を得られる手は、ありませんでしょうか。

<後略>

■回答■

予感されたとおり私からのお答えは、「これら全てを計画立てて、一つ一つ根気よく片づけてゆけ」です。

私のこれまでの経験的には、これらの重要な取組みを一つでも手抜きすると、結果的に遠回りをしたり、途中で挫折してしまう結末になっております。また我が国の製造業がよく陥る、ルールと体制を作ったら、後は現場で何とかしろ的な取組みでは、間違いなく失敗致します。

フロントローディング設計のススメで紹介しているA社は、都合4年の歳月を費やして、グラフに示しているような成果を得ました。さらにこれを水平展開して、全開発部門に行き渡らせるには、さらに4年の歳月を費やしております(図1参照)。



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A社におけるフロントローディング設計取組み効果


しかし、全てがこのように時間が掛るわけではなく、図2に示すB社では、着手4ヶ月後には最初の成果を観測でき、その2年中には開発部署内に水平展開が出来ております。



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B社におけるフロントローディング設計取組み効果


この違いは、着手時点での、A社とB社が持つフロントローディング設計に必要な、様々な技術力ポテンシャルに差があったことと、扱う製品の複雑さの違いで、このような大きな差が生じました。

私のこれまでの経験では、フロントローディング設計態勢の確立そのものは、これに関係する関係者の意識改革を巧く導いてやると、短期間で立ち上げることが出来ます。

しかし、実際の効果を享受するまでには、蓄積・体系化しなければならない、様々な技術情報があり、着手時点における保有ポテンシャルの差で、その期間に雲泥の差が出ます。

ご質問へのお答えは、手前味噌になりますが、短期間でフロントローディング設計態勢を立上げ、最短でその効果を得られる手は、私の現状診断を受診頂き、その結果に従って、私のご支援の下、根気よく取り組んでゆく事でしょう。