CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

有泉徹の年頭所感2013(後編)



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しかし現実には、これらの重要なポイントを蔑ろにして、自己の改革や体質強化に取組むこともなく、近視眼的な事業の統廃合や人減らしを行ってきた製造業が極めて多い。その結果これら企業の体力は消耗し続けて、仕舞いには、過去の栄光だけが虚しく戦ぐ、枯れ尾花のごとき企業に没落をしている。またその予備軍も多くある。

さらに、国内のさらなる雇用悪化や、高品質な部品供給を行ってきた優秀な中小製造業が軒並み倒産する危機が、襲いかかってくる危険性がある。チャイナリスクの現実化だ。

安い労働力を安易に求めて、深くそのリスクを考えずに、中国進出を行った製造業や、顧客企業の求めを受け、やむを得ず中国進出を行ってきた中小製造業達は、一昨年の尖閣における漁船衝突事件で、初めてそのリスクの大きさに気付いた所も、少なく無かったようだ。

益々嫌らしさを増す中共政府の傲慢さは、これら中国進出企業に、さらなる難題を吹っ掛けて来るに違いない。特にその体力が弱い中小の進出製造業は深刻だ。恐らく近い将来これらの中小製造業は、かつてヤオハンが味わったような、その本体をも巻き込んだ倒産劇が待ち受けているに違いない。

何故私がこのような判断をしているかというと、その典型例が、トウ小平に懇願をされ、松下幸之助翁が中国への進出と技術供与を決断した、パナソニックの工場に対する破壊活動だ。恩を仇で返すとは、まさにこのことだ。しかも無知な民衆が起こした破壊活動ではなく、当局の意向が働いての、乱暴狼藉だ。

パナソニックに対しては、2011年にも執拗な労働争議が起きた。中国の法律を厳守して、公正公平に経営を行っていたにも関わらずだ。まさにこの理不尽な仕打ちにも、当局の影がちらつく。

しかしこれらの中小製造業が、危険を察知して撤退を図ろうとしても、恐らく巧く行くまい。様々な難癖を付け、搾り取れるだけ、絞り尽くされるであろう。本体まで悪影響を及ぼさせないためには、夜逃げ同然に設備を放棄して、こっそりと脱出する以外はあるまい。

一方、これら中国進出企業(海外生産拠点を含め)は、国内の雇用悪化の元凶だった。企業存続を考えたやむを得ない選択と言われれば、一私企業のやることなので、何とも言いようがないが、我が国企業としての使命を果たしていたかと言えば、否と言えるだろう。

しかしチャイナリスクの大波は、生き残りをかけての中国進出が、大きく裏目に出て、体力に乏しい中小企業は、企業倒産という最悪な事態に陥る危険性が、上記の如く極めて高くなっている。そして、その本体までもが倒産してしまったのでは、半減したとはいえ続いていた国内雇用が、一挙に無くなってしまうことになる。


さらに始末が悪いのは、これまで各種産業の大手製造業に、高品質な部品供給を行ってきた優秀な中小製造業が、軒並み倒産してしまう恐れだ。現地で取って代われる部品供給元がないから、これらの中小製造業は、顧客企業に言われて中国進出を行った訳で、彼らが消滅すると言うことは、国内の産業基盤も一挙に消滅するということに他ならない。

これでは、私がかねがね提唱している、製造業の力を持って我が国経済を復活させる目論見は、根底から崩れてしまう。

恐らく私のホームページを、定期的に覗きに来てくれる方々は、常に広いアンテナを張り巡らせ、様々な情報の中から、自分たちにとって有益となる情報を、自分たちに合わせる形に咀嚼して、有効に活用してゆく取組みを、しておられる方々だと思う。

このような方々に、上記のような警鐘を発しても、余り意味がないのかもしれない。既に十分承知のことであり、既に充分な手立てを打たれていると思うからだ。

しかし、我が国全体の括りで見てほしい。「未だ我が国の製造業は強力だ!」と言い続けてきた私が、危機感を抱く状況が既に生じている。私一人の田作の歯ぎしりでは、どうにもならない話だ。

そこで皆さんにも、是非お願いしたい。事態が回復困難になるほど悪化する前に、世の大多数の製造業達が、かつての輝きを取り戻せるよう、積極的に働きかけてほしい。


具体的には、官をうまく利用することや、日々皆さんが取り組んできた成功事例を、積極的にメディアに公開する方法などがある。

これらを通じて、危機的状況に陥りそうになっている製造業に、目を覚まさせ、体力回復への自己改革に積極的に取組む意志を、強く持たせる狙いだ。当然、並や、力のある製造業が、さらなるブラッシュアップに取り組んでくれれば、それに越したことはない。

私は冒頭で、“官”を悪徳官僚の集団と言った。とは言え、若手には、未だ見込みのある者達も少なくないし、我が国の将来に強い危機意識を抱いている者達も少なくない。

彼らを、皆さんの会社が所属する業界団体などを通じて、巧く利用するのだ。これまで多くの業界団体は、圧力団体の目的とは裏腹に、ともすれば彼らに利用されてきた経緯がある。しかしこれからは、皆さんが彼らを利用する立場へと変わっても、良いのではないか。

例えば「国家強靱化計画」をもじって「、製造業力強靱化プロジェクト」等と銘打って、業界団体参加企業に、製造業力強化への取組みを、積極的に働きかけてゆくような取組みだ。

我が国には様々な製造業系業界団体がある。これらが一斉に「製造業力強靱化」を掲げて動き出したら、マスコミは放って置かないだろうし、このような取組みに一家言ある知恵持ち達が、参集して来るに違いない。

かつて、「TQCに取組まない製造業は、まともな製造業ではない」などとの烙印を押されたり、株価にも影響を与えた時期があった。動きの悪かった製造業は、世の趨勢には逆らえないと、消極的ながらも、TQCへの取組みを始めたものである。私の目論む「製造業力強靱化プロジェクト」は、世の趨勢として、我が国製造業が積極的に、自己改革や体質強化に取り組まざるを得なくなるような、雰囲気を作り出すことである。

また官を巻き込んだ業界団体の動きで期待したいのは、上記したような、中国進出中小企業が倒産した際の、技術の受け皿作りだ。それぞれが持つ継承技術や固有技術の多くは、属人的な側面がある。企業が消滅しても、技術を持った人たちが消えるわけではない。

彼らの生活とプライドをしっかり保証する形で、業界団体として、国家として、これらの技術を守る必要がある。バブル崩壊後、理不尽なリストラを受けた優秀な技術者達が、サムソンをはじめとする韓国企業にスカウトされ、技術をすっかり持ち去ってしまった轍を、二度と踏んではならないからだ。


メディアへのアピールは、日刊工業などの新聞や雑誌、機械学会などの学会誌、各ソフトやハードの販社の講演会などがある。これらに対して積極的に投稿・講演を行う事だ。恐らく皆さんの成功事例や、苦難の取組み顛末などは、記事や講演ネタを欲しがっている彼らなら、喜んで飛びついてくるはずだ。彼らへの橋渡しは、必要なら私が務めても良い。

まずは私の掲示板に、皆さんの経験や考え方のサマリを投稿して欲しい。皆さんの事例を紹介するコーナを私のホームページに設けるので、掲示板に投稿した内容他を、さらにブラッシュアップさせて、成功事例や取組み事例として、公開するのだ。

上記メディア達は、鵜の目鷹の目でネタ探しをしているので、彼らの興味に合致さえすれば、直ぐにレスポンスがあるはずだ。また、私の知り合いの記者達や販社の広報担当などには、前もって新コーナの紹介をしておく。

皆さんの積極参画を期待している。