CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

有泉徹の年頭所感2013(前編)



2012年も様々な出来事が起きた年だった。

自己の権益や利益の追求しかその頭の中にない、腐れ政治屋や悪徳官僚どものおかげで、一向に回復の兆しが見えない我が国の景況は、さらに悪化の一歩を辿った。

我が国が本来持つ国力を総動員すれば、とっくに回復の道筋が見えているであろう、東北の津波被害は、未だ各所で、復興の端緒にさえ付けない状況が見受けられる。省益の壁が一掃でき、縦割り行政の非効率を一掃できたら、その進み具合は大きく変わっていただろう。

さらに自らを優秀と自負する官僚達が、机上で夢想した、現実離れした計画などを、現場に押しつけるのではなく、被災地各所に散り、能動的に動いたならば、復興のために投下した膨大な予算が生かされ、その復興は急激に進み、さらに我が国全体の、景気回復への強力な推進力になったに違いない。

また、福島第一原発への対応も生ぬるすぎる。何をしたいのかが解らない、場当たり的な施策では、この重大事故を短期間に押さえることも儘なるまい。ここでの不透明さ、先行きの読めなさも、国民の将来への希望を潰えさせ、我が国景気回復の足を引っ張っている。

さっさと東電を倒産させて、その送電網を競売に掛けたら良い。一説には、5兆円とも言われる送電網の資産価値は、倍どころか数倍の価格で応札されるはずだ。毎月確実に固定収入が得られる送電網は、だぶついている資金に取って、絶好な投資先であるはずだからだ。1500兆あるという我が国の貯蓄資産を、1%呼び込むだけで15兆円になる。

そうすれば、4兆5402億円(東京電力に関する経営・財務調査委員会調べ)と見積もられている補償費は、一切の国民負担無く解決できる。

さらに残りの数兆円を使い、一挙に廃炉への取組みを行えば良い。2年以内などの期限を定め、外国人労働者も許容するなどの手不足対策も含め、アレバなどに請け負わせれば、喜んで引き受けるに違いない。当然労働者達に対する被爆被害など、厳しい監視を行った上でだが。

ただし、電力の安定供給などの、国民生活を守る安全保障的な要素があるので、電力網競売入札者(資金の出所)には、純日本企業や日本人であるなどの制限を、かける必要性はあるが。


一方、本来なら我が国経済を、先頭に立って牽引しなければならない我が国製造業の一部には、目を覆いたくなる惨憺たる現状がある。

以前から私のホームページなどで警鐘を鳴らし続けていた、自己改革の努力を怠り、マーケットをしっかり見据えない、マーケットの声にしっかり耳を傾けない、独りよがりな製品を世に送り出し続けてきた、一部の大手製造業達である。

私が日頃懇意にしている、強力な製造業力を持つ製造業達は、左団扇とは言えなくても、十分に21世紀を勝ち抜いていける状況にある。新聞を賑わしている危機的な製造業は、我が国全製造業の中から見たら、僅か一握りにしか過ぎないかもしれない。しかし一世を風靡した、我が国製造業の一角が崩れてゆく現状には、寂しさを感ずるが、現時点では我が国製造業が崩壊してゆく前兆とは見ない。

しかし、日々代替わりしてゆく製造業経営層の、先を読む力の無さと、器の小ささには強い危機意識を抱く。どう贔屓目に見ても、自己改革を怠り、付け焼き刃的な近視眼事業経営に、終始している破綻予備軍の製造業を、ここ数年多く見受けるからだ。


私は、常々我が国製造業のあるべき姿、即ち21世紀を勝ち抜いて行ける製造業のあるべき姿を、次のように定義して各所で述べてきた。

「21世紀を勝ち抜く製造業に課せられた使命は、そのものづくりを通じ、社会正義に反することなく、適正な利益を上げ、株主に適正な配当を行う事にある。利益の分配に際しては、その利益を得るために身を粉にして働いた従業員に対しても、応分の還元(分け前)がなされることは当然だ。さらに納税の義務は基より、企業活動を行って行く上で、協調関係にある社会への適正還元も忘れてはならない。

そしてこれらの責務を各製造業が果たすためには、“旬で、よく売れ、稼げる商品”を常に開発し続ける必要がある。要するに全世界の顧客ニーズにマッチした、安全で高品質且つ適正価格な製品を、より短期間且つ低コストに開発できる実力を持ち、常に安定した商品開発と製品供給を実現することだ。

その結果、我が国製造業が潤い、株主が潤い、従業員が潤い、関係者が潤い、国民全体が潤う構図を実現する事が、我が国製造業が目指すべき姿と言える。なお全世界の顧客ニーズにマッチした商品とは、場合によっては、全世界共通と言うこともあるかも知れないが、原則的には、世界の各地域、各国が持つ、それぞれのニーズに、的確且つこまめに対応できた商品を意味する。

さらに、ますます厳しさを増すグローバル競争の中で、我が国製造業が勝ち抜くためには、強靱な体力(開発力・生産力・販売力)を付ける事が必須だ。世界中の顧客に、喜んで購入・使用してもらえる、高性能・高品質・低価格な製品を、投入し続け、しっかり稼ぎ続けることができる体力である。

このためには、生み出した適正利益の中から、将来(5年〜15年先)を目指した、的確な先行投資(先端技術の仕込み・優秀な人材の確保育成・工場用地や先端設備などの確保など)を行うとともに、ともすれば崩壊しようとしている自分たちの足下(商品・製品開発力の低下=設計力の低下)を、しっかり固めることが最優先で求められている。

また従業員の雇用形態についての私の考え方は、終身雇用を是とする。特に知的作業の集合体である商品設計・開発・さらには物作りの勘所は、それらを担う人材如何でその体力に大きく差が生ずるからだ。

しかし、業績貢献と連動しない年功序列には、賛同できない。少なくとも“働かない人間”“仕事を作り出す人間”“周囲の仕事の足を引っ張る人間は、”利益追求を目的とする民間企業としては不要な人間(人材ではない)である。このような人間にまで、闇雲に応分以上の賃金を与え続けたり、在社年数だけでポジションを与えるような、愚かな習慣は容認しない。

そして以上のような企業体質に、我が国製造業が変革して行くためには、何を為さなければならないか、どのような手法手段を用いればよいのかを、この十年来、本ホームページを始め、様々なメディアを通じて呼びかけてきた。

さらに製造業は、優れた物作り力を、弛まなく追求し続けることが必須だと考えている。“旬で、よく売れ、高収益を上げる事が出来る商品開発力”と、強力な提案力と強い戦略性を持った販売力を備へ、他に追従を許さない強力な企業体質を確立することを、常に追求し続けることだ。

そして私が提唱する、平均的な我が国製造業が目指すべき10〜30年後の姿は、“我が国を知恵・頭脳・技・情報の発信元とした、世界の隅々までをそのマーケットとするワールドワイド企業”だ。生産拠点は、扱う商品の特性により、マーケットに密着した現地生産型から、日本国内などにおける一極集中型まで、臨機応変での対応する形態だ。

そして全てを統括する本社機能と、開発の中枢、さらにはマザー工場や金型部門など、物づくりの中枢を国内に置き、人材の効率的な運用、ノウハウ・情報・技術の集中による効率化を図る形態だ。」



(1月4日に続く)