2012年12月2日、朝7時頃、私は隣に妻を乗せ、愛車のレジェンドを駆って、甲府方面に向かっていた。日曜日の朝なので行楽に向かうであろう車などで、若干の混雑は始まっていたが、快適なドライブだった。
一時間後に反対車線で大惨事が起きることなど知るよしもなく、笹子トンネルもあっと言う間に通り過ぎ、真正面に広がる甲府盆地や雪を頂いた南アルプスの雄大な景色に、感嘆の声を上げていた。
昼前に、笹子トンネルで崩壊事故の一報を聞き、その建設当時、地盤の悪さが話題になっていたことを思い出して、岩盤のゆがみなどによる天災だろうと、勝手に思いこんでいた。
しかし事故の詳細が明らかになるにつれ、機械エンジニアとしての私には、腑に落ちない内容が混乱した状態で送り出されていることに気付いた。そして様々な疑問が湧いた。
ちなみに私は、当時建設機械の新米設計者であった。そして上記した疑問の基になる工学知識は、既に常識として保有していたと思う。当然私だけではなく、同僚達もだ。
さらに機械設計では、仮にこのような、重量物を吊り下げなければならない構造を、選ばざるを得なかった場合には、ナットが緩んだ場合を見越し、荷重を全面的にボルトが受けないような構造(例えばブラケット同士を引っかけるような)に設計するのが普通である。
また、たとえケミカルアンカーメーカが、強度保証をしていても、私なら怖くて問題のような吊り下げ構造には出来ない。そもそもメーカは、耐用年数を30年以上保証していたのか?一般常識から診てとても信じられない。しかも一吊り具あたり、M16ボルト2本だけと言うのも、機械設計の常識からは、とても信じられない内容であった。
そして帰宅後、それまで判明している情報を基に、どのようなメカニズムで事故が起きたのかを予測してみようとチャレンジしたのだが、何せ文化系の記者達が発信してくる情報では、天井板の吊り下げ構造の詳細が判らず、当面は無理とギブアップした。
更にアンカーボルトと吊り下げ金具が、どのような結合状態なのかを確認しようとしたが、やはり詳細な構造を記した情報を見つける事ができず、ギブアップの状況である。
追々構造図なども公表されてくると思うので、これらを確認した上で、後日続報として私の見解を述べるつもりである。
(1月11日に続く)