具体的な取組みとしては、当時CAD管理を行っていたチームから、「世の趨勢は3次元」と言う報告を受け、また彼らが段取りした複数のCAD販社の説明会を経て、導入検討プロジェクトを立ち上げた。プロジェクトは、課長クラスをチーフに計5名のメンバーでスタートした。内3名は、2次元CADの管理・サポートを行っていたメンバーの掛け持ちである。
「推進部隊のメンバーの皆さん、何か補足や異論があれば、先生に説明してください。」
推進メンバーA;
「設計の質を高めるという目的で、CAEの活用を推進した。外部講師を招いての、CAEの入門教育や、設計者向けCAEの導入などをこの十年来続けている。」「また生産技術などとの、後工程と協調する取組みも積極的に行ってきた。ラピットプロトタイピングや試作用の簡易鋳型などは、その典型例だ。」
推進メンバーB;
「設計者達が各々取得した、モデリング技術や設計アプローチ方法などを、共有化する取組みを積極的に展開してきた。定期的に行っているCAD勉強会やコンテスト、3次元CAD設計マニュアルなどがそれだ。」
・・・他、推進担当者達からのコメントは、これ以外にも多数あった。
お話をうかがう限り、これまで私が診てきた多くの製造業のなかでは、かなりまともな導入検討スタートを行っていると診た。
しかし言葉尻を取るようだが、導入検討着手の主たる動機が、「世の趨勢は3次元」では戴けない。本来なら3次元CADなど全く関係なく、設計技術力の低下の解消、向上への施策が最初に提起されて然るべきだった。さらに「世の趨勢は3次元」が全てのスタートだったことが、恐らく大きく影響しているはずだが、全ての取組みで、3次元CADを、主目的に置いてしまっている。
導入検討チームは、3次元CAD導入を的確に行い、巧く立ち上げることを、そのミッションとされていたはずだ。ならば当然のこととして、常人であるなら、その視野は狭くなる。その視野の狭さに気付き、誤りのない方向性を示したり、新しいミッションを与える責務は、当然のこととして、経営・管理層の責任である。
だからこれまでの顛末で、責任をもし誰かに取らせようとするなら、歴代の設計統括・担当役員や、設計部門の管理者達であることを忘れないで欲しい。
しかし仮に私が、導入責任者を務めていたなら、上層部を巧くコントロールして、最適な方向に引っ張って行ったと思う。導入を担った方々も、そのあたりを良く自覚・反省し、直ぐにでも軌道修正案を上層部に具申すべきである。
最後に、本来本日は、私の商売を抜きに貴社にお邪魔したのだが、急遽私の本業の営業活動をさせて貰う。
もしご依頼頂ければ、可能な限り最短・最大効率で、貴社の軌道修正が叶い、最適な製品開発・物づくり態勢が実現できるよう、鋭意お手伝い申し上げる。