CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

結局は、3次元CAD導入開始時点での誤りが、投資対効果を生めなかった全ての原因(10月21日掲載分の続き)


■質問■

<前略>

弊社でも3次元CADをうまく立ち上げたつもりでいたのだが一向にフロントローディングになっていない

<後略>

■回答■

お送り頂きました資料一式と、補足説明を拝見致しました。

結論的には、**さんがお感じになられた、「どうも弊社の3D-CAD導入は、たかが道具をうまく操作しているだけで、製品設計そのものの質向上にはつながっておらず、失敗の部類に入ると理解致したのですが、誤りはございませんでしょうか」は、的を射たご判断と考えます。

詳しくは、やはり実際に貴社の状況を、つぶさに拝見してからでないと、正確なところは申せませんが、現在までに頂きました情報の範囲内で、簡単に以下のコメントをさせて頂きます。

まず一連の経緯をお見受けして、貴社の不幸の始まりは、その導入検討時点におけるボタンの掛け違い(詰めの甘さ? 勘違い? 設計行為への不理解? 手抜き? 切っ掛けになった責任者の出世欲?・・・)が、全ての根元にあると診ました。

貴社のケースでも、巧く行っていない製造業に、平均してみられる取組みへの姿を見受けました。それは、まず初っ端の導入検討計画書で、「製品開発業務の改革」「設計品質の向上」「設計業務プロセスの改革」などの美辞麗句を並べ、その切り札として3次元CAD活用が必須だと謳っております。

ところが、その時点における貴社設計部署、若しくは製品開発組織において、何が問題なのかの部分への切り込みが浅く(全く為されておらず)、単に「膨大な開発所要時間を要している」「試作段階での設計手戻りが多い」「製品出荷後の不具合対策費が大きい」などの、表面的な問題現象を列記しただけに等しい、現状分析からのスタートと診ました。

その証拠に、それぞれの現象面に対して、3次元CADを用いて、どのような改革改善を期待するかの言及が一切無く、恐らく販社から提供された資料と思われる、先行する他社の成功事例でお茶が濁されておりました。

一方、「製品開発業務の改革」「設計品質の向上」「設計業務プロセスの改革」などは、意識ある製造業なら、3次元CADなどを抜きにしても、日々取組んで来た重要な取組みであろうし、常に何が問題かを把握しておくべき、企業活動の根幹部分をなす、重要な施策項目のはずです。

ですから、貴社の3次元CAD導入への目論見書で、これらの切り込みが浅いのは、これらの問題点は、既に詳細に分析され、関係者全てで周知されていた事実かとも、当初は判断しておりました。しかし、お送り頂いたその後の取組みに関する資料を拝見していて、直ぐに私の買いかぶりであることに気付きました。

詳しくは、報告書として纏めて提出させて頂きますが、参考までに、現時点で私が感じております、貴社3次元CAD導入への取組みにおいて、犯してしまった重大な誤りを、以下に列記致します。

  1. 導入開始時に掲げた目的と、具体的な導入アクション内容の乖離
  2. 導入効果を図る指標の設定ミス(成果を誇示するための作為?)
  3. 年度毎のやり散らかし、継続性の欠如
  4. 一定期間(年度毎も含め)を区切った総括(振り返り分析)の欠如
  5. 的確な状況認識を経たとは思えない、(思い付き?)施策の様々
  6. 一連の取組みを担ってきた担当者達の“設計行為”“製品開発行為”への不理解