<前略>
先日は、会員未登録にも拘わらず、貴社会員向けコラムページ(9月24日掲載)を特別に御公開頂きましてありがとうございました。薄々は感じておりましたが、先生が唱えられているお考えの、時流とデータをしっかり読んだ先見さに感銘を受けると共に、私どもの不勉強さを反省致した次第です。
さて弊社でも、今般生じた**********における中国政府のやり口をみて、遅ればせながらその対策に取りかかっております。公開頂いたコラムの行間を読むと、恐らく先生がご指導されている企業さんでは、弊社のような泥縄的方針検討など必要とせず、既に万全の手が打たれてあり、高見の見物と言うところでしょうが、これまで脳天気でいた弊社にとっては、弊社存亡にも関わる極めて重要な緊急課題であります。
弊社の中国進出は古く20年前遡ります。当時弊社の協力工場として取引のあった******が、その生産拠点を中国に展開しようと、弊社に合併会社設立の協力を求めてきたのがそのきっかけです。
進出直後は、現地法人で生産した製品を100%日本に輸入する形態で、労働集約型部品を廉価な人件費を用い専ら生産すると言う、それまで******が***生産していた機能の単なる置き換えであり、あくまでも当社の部品工場の位置づけでした。
このためその生産は、品質面での歩留まりに留意し、弊社の製造・品質管理の下で、現地採用の従業員に徹底した教育をおこない、国内生産品質をそのまま失言することを目標に取組みを行って参りました。
このようにして生産した部品類は、国内に取り込む際に、さらに念押しをする意味合いで、最終仕上げや検査を徹底しておこない、国内で最終完成品を組み立てる役割分担としておりました。ちなみにこれらの完成品の供給先は、日本国内と欧米先進国がその殆どを当時は占めておりました。
ところがこの10年、日系企業や欧米企業の中国進出に伴い、中国国内で現地納入するニーズが高まり始め、更には現地企業の急激な成長につれ、そちらからの需要も鰻登りに増えることになり、現地で最終製品まで仕上げる比率が半分近くにまで増えている状況です。
そしてこのような現状と、合弁先***企業側の強い要求を受け、新製品開発の一部と中国国内向け量産品の設計維持業務を、現地移転する方向を中期計画に盛り込み、昨年度よりその準備を進めて参りました。
本年始めには、現地法人敷地内に開発センターが入る建物に着工し、突貫工事の結果、建物自体は間もなく完成する予定です。
併せて現地スタッフの募集を着工とほぼ同時に開始いたしました。しかし適切な人材の確保は、現地における急激な人材不足もあり苦戦を強いられております。弊社のベテラン設計者を中心に採用チームを編成し、彼らを現地に駐在をさせたうえ現地通訳とコンビを組ませ、書類選考を通過した応募者全てを面接しているのですが、なかなか思うような人材に行き当たりません。
彼らからの報告によれば、応募者の殆どが、華々しい経歴や自己能力を強くアピールしてくるのですが、機械設計者としての基本部分や機械工学に関する基礎知識に対する問い掛けに、まともな答えを返せない者が殆どのようです。このため採用チームの特に若手メンバーからは、「あいつら本当に設計経験があるのか」と言うような声が上がる始末で、採用責任者は困り果てているようです。
採用賃金を高くすれば優秀な人材も応募してくるのでしょうが、他の進出日系企業とのバランスも考えなければならず、コアーになる人間は、***で採用して現地に送り込む案も出てきております。しかし、こちらも優秀な人材の確保が叶うか否かは全く未知数です。
一方これまでの20年間、*****************などに付いては、***系企業との合弁メリットを生かし、総経理や対行政窓口のスタッフを***企業側に委ねていたため、弊社としては、その面からの苦労は殆どありませんでした。しかし***側のメンバーは、相当苦労を重ねてきたようです。
例えば現地法人の決算を精査すると、膨大な使途不明金が発覚することが多々あります。また本人の能力とは掛け離れた現地スタッフ人事が少なからずあります。恐らく現地行政への対応上の結果と思われる物で(全てがそうだとは思わないが)、問題と感ずる面は無いわけではありませんが、当社として現地法人からは充分にメリットを得ているため、ことさら目くじらを立てない方向で静観しております。
また上記した開発機能の現地移転も、そもそもは、*****************よるものと理解しております(***メンバーは口には出しませんが)。
なぜならインターネット環境の急激に進んだ昨今、現地に開発設計者達がおらなくても、図面データのやり取りを始め、緻密で細かい情報交換まで、お互いの席に居ながらにして行なえる環境が既に実現できております。
また幾つかの拠点を結んでビューアなどを用いたCAD図面や動画画像共有化機能を駆使した遠隔地DRも実現できており、現地法人側に取って、特に不自由を感ずるところはないはずで、必須で開発部隊を手元に置く必要性は無い環境が既に実現しております。
又我々サイドも10年前ならいざ知らず、現地の生産側スタッフが育った今、新機種立上げ時以外には、担当設計者の立ち会いも必要としない状況になっていたため、「なぜ今になって現地開発を?」の疑問も呈される中での現地開発機能移転決断でした。
ですから建前では、“新製品開発の一部と中国国内向け量産品の設計維持業務を現地移転する方向”ですが、或る意味、無駄覚悟の取組みです。他にも沢山、現地生産での問題点や今後への不安点などがあったのですが、20年の流れの中で、本質的な問題を敢えて避けながらの、場当たり的と批判されても仕方のない受け身の取組みを行って来たわけです。
そしてここに来て*****************をあからさまに見せられ、あわててこれからの対中国戦略を策定し直さなければならない所に追い込まれたわけです。
先日ご公開頂きました先生のコラムで、先生が指針を出されていた、*****************事。**********************************は、中国国内出荷向けのみに用いる事。の方向性をそのまま参考にさせて頂き、合弁先の***企業と連絡を取りながら迅速に結論を出そうと考えております。
しかし一方、既にアクションを取っております現地に開発機能を持たす件ですが、極めて悩ましい判断を迫られております。先生も他のコラムでおっしゃられていると思いますが、「マーケットのニーズを的確にくみ取りそれを商品に展開する(文言は違いますが)」をより効率よく実現するためには、開発部隊は可能な限りマーケットに近い方が望ましいと考えます。
しかし一方、機密情報漏洩や現地採用スタッフの信頼性などの疑念は、弊社が持つ膨大な固有技術や継承技術を、安易に現地開発部隊と共有することには躊躇します。しかしこれらの技術がない限り、的確な設計品質を持った新製品開発など到底無理で、この矛盾した課題をどのようにクリアーするかが最大の悩みです。他にも上記のよう、なかなか優秀な人材が確保できない物理的な問題もあります。
そこで様々な企業さんをご支援されている先生のご見解を賜りたいのですが、この現地開発機能の設置をどのように判断すれば良いと思われますか。また全般的に弊社は、今後どのような姿勢で、対中国への対峙を行って行けばよいと思われますか。
弊社の生い立ちから現状を網羅的にご理解頂けると思われます、最近刊行したばかりの社史及び現地生産に関連する資料一式を別送致しますので、ご一読頂いた上ご意見を賜れますと幸いです。
なお、この御相談を回答頂くにあたりまして、お支払い致さなければならない費用を、事前にお知らせ頂けますと幸いです。
追伸)お送り致します資料に関してですが、先生は技術士さんですので問題はないと思いますが、社史を除きましてその取り扱いにはご配慮下さい。又ご使用後は、お手数ですが社史を除きまして着払いで小職充てご返送下さい。社史はご迷惑でなければ貴事務所の蔵書に加えて頂けますと幸いです。
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回答は、緊急レポートが入らない限り、次週の後編で掲載させて頂きます。