<前略>
弊社にとってもこの3年余りは、極めて厳しい状況が続きました。しかしここに来て売り上げも大幅に回復して、来期の収益には極めて明るい物が見えて参りました。
そこで、収益悪化に伴い一切の設備投資を止めていたPLM関係の環境を、他社に先駆け一気に更新を行い、他社をダントツで引き離せるダッシュ態勢を取れるよう、その準備に取りかかろうと考えております。
そこでお教え頂きたいのですが、この取組に際しての注意すべきポイント、及びこれから10年後を目指したPLM環境整備を行うにあたってはどのような点に留意して取り組めばよろしいのでしょうか。
漠然とした質問ではお答えを頂くことも難しかろうと、弊社のPLM環境の現状を示す資料を添付致しますので、これをご覧頂いて、コメントを頂けますと幸いです。尚お送り致しました資料は、絶対に外に漏らさないでください。
<後略>
お送り頂きました資料を拝見致しましたが、この情報だけでは、何ともお答えをしようがありません。なぜなら、PLM環境を道具として用いる貴社の製品(商品)開発に関わる現状(強み弱み・問題点やこれまで行ってきた取組の経緯など)を示す資料が、全く添付して頂けておりません。これでは、貴社のPLM環境が、貴社の製品開発にどのような形で用いられており、それから貴社の皆さんがどのようにメリットを享受できているのか?若しくは、巧く環境を構築できていればメリットを享受できるのにも拘わらず、不便な思いをしたり、効率の悪い作業を余儀なくされていないか?などが全く見えてきません。
そもそもPLMとは、製品(商品)開発を行うに際して、最も効率よく、最も質高くその作業を遂行するための、支援ソフトや、それらを稼働させるハード環境、ネットワーク環境などの総称です。CIMと言うコンセプトが陳腐化してしまった後、それに取って代わる、これらのインフラを販売するための新しいコンセプトとして、提唱されて来た言葉です。
ですからこれまで売る側の人々は、PLMとはと、様々なタガを掛け、自分たちの商売に巧く結びつくよう、どちらかと言えばプロダクトアウト的な提案を行ってきました。そして皆さんは、それに踊らされ、本当は不必要だったり、不向だったりもする、様々なPLMツールを購入し、大枚を費やしての環境整備を、リーマンショックが起こるまでは行っておりました。恐らく貴社も同じだと思います。
そしてこの数年、営業不振で喘いでいたPLM販社達は、やっと不況からの脱出口が見え始めた昨今、一斉にあの手この手を使った攻勢を、収益が回復基調に入ったと思われる各社に、掛け始めている現状だと認識致します。恐らく貴社にも、このような提案が幾つも押し寄せている結果の、お問い合わせではないのでしょうか。
さて、お問い合わせ頂いた“注意点”ですが、上記したように、判断を行う上で必要となる情報が欠落しているので、「基本に忠実に」と言う以外お答えをしようがありません。
基本とはPLMツール群は、あくまでも、製品(商品)開発を最も効率よく、最も質高く行うに際して、その作業遂行を支援する道具です。ですから、既存のPLM環境が上記役割を充分に果たせていないのであれば、その部分を改善・改革できる道具や仕組みに置き換えたり、追加導入することで、製品(商品)開発の質や効率を高める取組を行うべきでしょう。当然その目的に応えることのできる道具や仕組みがあって、それに費やす投資に対して、充分に効果がある場合の話ですが。
一方製品(商品)開発の質や効率に、現時点ではさしたる問題点を見出せない場合(このようなケースは無いと思うが)には、PLMのツールを更新する必要はないはずです。また問題点が少なからずあった場合でも、それらの問題点が支援ツールの問題ではなく、設計者の質の問題や、設計アプローチ方法の問題だったりする場合には、PLMツールの更新以前の取組が必要になるはずです。ここが私が言う、「基本に忠実に」と言うことです。
次のご質問の、“10年後を目指したPLM環境整備の留意点”ですが、これも、貴社が10年後、どのような姿になろうとしているか、特にその製品(商品)開発をどのように持って行こうとしているかが、明確に定められていないと、留意すべき点もコメントしようがありません。
強いて言うなら、「自社の10年後の姿を、貴社が持つ総力を投じて策定すべき」と言うことになると思います。
いずれにしろ弊社の“現状診断”を、受診されることをお奨め致します。PLMツール更新の要否を含め、必要な場合PLMツール更新の的確な方向性、計画をご提示するとともに、製品(商品)開発や物作り全般に渡る問題点の抽出、改革・改善案の提言などを行わせて頂きますので。
尚お送り頂きました資料は、画面上の閲覧に止め、一切プリントアウトは致しておりません。しばらくの期間は保存致しますが、今後貴社とのお付き合いが生じそうもない場合には、速やかに消去致します。
私ども技術士は、技術士法と言う法律で規定された資格です。そして弁護士や医者と同様に守秘義務が課せられております。ですからお送り頂きました資料に関する、当方からの人的要因に起因する情報漏洩は、一切起こりえないとご安心下さい。
唯一の可能性として、弊社が契約しておりますセコムの警備システムを破った進入者が、お送り頂いたメールが保存されているPCを盗みだし、貴社の情報を目当てにその内容を読み出さない限り、漏洩は起こりえません。しかし現実的には、社内にある数十台のPC全てを持ち出し、その全てのハードディスク情報を読み取るなど、非現実的な話です。ましてや、貴社情報が存在するかどうかも分らない中で、そのような行為をわざわざ行うとは考えられません。ですから、限りなく100%に近い、確率で安全とご理解願います。