CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

解析対象物に生じている物理的な現象に忠実でない解析モデルでも、ケースバイケースで大丈夫か?・・・・私の経験ではほとんどが“無駄な解析・有害な解析”と言う結果に陥ると思います



■質問■

<前略>

弊社では、先生の御著書などを参考にさせて頂き、フロントローディング設計を目指して、長年「設計者自身が用いるCAE」をスローガンに、その普及に取り組んで参りました。おかげさまで3DCADに付属する設計者向けCAEソフト程度なら、ほとんどの設計者が使えるようになり、出図前の事前検証を行うようになって参りました。

しかし最近解析モデルに対する条件の与え方に、疑問と不安を覚える場面が多々生ずるようになっており、ご面識も無い先生に突然のお問い合わせをさせて頂きました。

具体的な内容としては、実際には等分布荷重ではないのに、解析モデルでは等分布荷重としている例、荷重点が移動しているにも拘わらず初期荷重点だけでの評価で済ませている例、実際は滑る状況での結合にも拘わらず完全結合にしている例等、数え上げたら枚挙に暇がない状況です。

「条件が違うのではないか」と言う当方の指摘に対して、現場の設計者や彼らを指導しているCAE推進者からは、「解析ツールの制約でうまく条件設定ができないからやむを得ずこのような条件で代用している」「実際に生じている現象を考慮しながら解析結果を用いているから大丈夫だ」等との返事が返ってくるのですが、私としては、彼らの答えには、極めて大きな疑念を抱いております。

なぜなら、設計審査などの場面で彼らが設計した内容をチェックするのですが、対象の部位や構造に、実際に生じている物理現象の把握、即ち予測が的確にできていないのでは無いかと言う場面に度々遭遇するからです。的確に予測できていないどころか、私から指摘されるまで全く考えていなかったのではないかと疑える場面もあり、疑念となるわけです。

そこで先生にご質問ですが、解析対象物に生じている物理的な現象に忠実でない解析モデルでもケースバイケースで大丈夫なのでしょうか。

<後略>

■回答■

一度おじゃまさせて頂き、過去の具体例の幾つかを見せて頂いた上でないと、的確なお答えは致しかねますが、私の経験的には、貴社でのCAE活用は、極めて危機的な状況にあるのではないかと診ます。

過去私が関わってきた解析モデルでも、実際の物理現象と異なる解析条件(荷重・拘束・等)でのモデルを構築してきた例は少なからずございます。一般には、“解析時間を大幅に短縮する”、“解析モデルの構築時間を大幅に短縮する”“解析モデルを大幅に簡素化することで、繰り返しの試行錯誤を容易化して構造最適結果への到達を最短にする”等の明確な目的を持っていることが大前提です。

これらの解析モデルを構築するに当たっては、対象機械に生ずる物理現象や挙動を、様々な手段(歪みゲージ・歪み分布測定・変位の可視化・サーモグラフ・高速度カメラ・等)を用いて可能な限り把握致します。当然上記のような手段を講じなくても、それぞれの企業が持つ継承技術や経験でこれらが把握できている場合は、当然余計な手間を掛ける事はせず、可能な限りこれらを活用することになります。

そして、これらの情報を念頭に置き、物理の法則に照らして、明らかに得られる結果に与える影響が少ないであろう要因(荷重・拘束などの条件)をネグレクト(あえてモデル化しない)する等のステップを踏みます。この様な行為を私は“解析モデルの簡素化”と呼んでおります。

上記した内容は、最も厳格に行う“解析モデルの簡素化”の例で、時間と手間を掛けて行うケースです。しかし日々の設計作業の中で、設計者達は、上記したような“解析モデルの簡素化”をモタモタ行っているわけには行きません。なぜなら出図期限という恐怖のプレッシャが、彼らに重くのし掛っているからです。

このような状況下に置かれても、中には、的確に対象となる物理現象を把握して、その上での的確な“解析モデルの簡素化”ができる設計者もいるでしょう。俗に言う“スーパーエンジニア”です。CAE等のツールが無い時代から彼らは、材力の梁モデルやバネ・マスの運動方程式を駆使して“簡易解析モデル”での予測設計を行っておりました。ですから道具がCAEに代わっても、彼らには心配要りません。3次元CADに付録するCAEツールでは彼らは不満でしょうが。

しかし多くの設計者達は、このようには参りません。“スーパーエンジニア”の様にはうまく行かず、“デタラメなやまかん”を駆使するか、CAEシミュレーションなど行わないか何れかに陥っているはずです。

さらに、フロントローディング設計を“形”から入ろうとして、義務的に事前(出図前)解析を義務づけている場合などは、私の経験では、ほとんどの設計者が“デタラメなやまかん”を駆使する結果に陥っていた例があります。

貴社がこの様な状況に陥っていないことをお祈り申し上げます。

参考に、境界条件を後ってしまぅたため、全く違った解析結果になってしまった例を本ホームページの下記欄で紹介しておりますので参照下さい。

"ご存知だとは思いますが拘束条件の違いでこのように結果が異なります"