<前略>
すっかりご無沙汰させて頂いております。
先生に、設計業務の改革と、それに伴う3次元CAD活用やCAE技術取得のご指導を頂いてから、既に15年になります。その後先生には何度かおいで頂き進捗状況の確認をして頂いておりましたが、この5年余りは、ご多忙な先生もご迷惑かとお声を掛けそびれ、すっかりご無沙汰となってしまいました。
さて本日お問い合わせさせて頂きましたのは、先生もご存じのように、弊社の3次元CADは、3種類の流れがあり、それぞれで切磋琢磨しながら活用化に取り組んで参りました。我々の部署は、先生の「皆さんが選択したCADは誤りだった。しかし入れ替える程の致命的な誤りでもないので、工夫してうまく立ち上げよう」、と言うご指導の基、手前味噌ですが社内で群を抜いて巧く活用できていると自負しております。
また、ご指導中及びそれ以降に構築し、CADのバージョンをフリーズ状態にしてある自動設計システムの、ハードの手当などに不安を抱く事はあっても、先生の先手を打ったご指導を賜り、おかげで部品取り用のスクラップマシーンは、しばらくは尽きることもなさそうです(図面データや各種設計データのバックアップ保管庫を兼ね、辺鄙なところに倉庫を確保したためそのコストはかかりますが)。
一方弊社の経営環境は、ご多分に漏れず芳しい物ではございません。我々の部署は、先生のご指導の結果、競合他社に対する圧倒的な商品力の差で、何とか赤字に転落することは免れておりますが、売上比率の高い**事業など殆どが大赤字に陥っており、全社としては大幅な経費節減を余儀なくされております。
そのような中で、3つの流れのCADの内の一つを提供するある販社が、全社のCADを自社が提供するCADに統一することにより、CADのメンテナンスコスト(年間メンテナンス・サポート料及びお守りの要員費)の大幅削減ができるとの提案して参りました。
しかも「そんなことは無理だと」積極的な発言もせず、様子見をしていたところ、どうも本社のIT推進部門と販社が連んで手を打っていたようで、あっという間に、全社方針としてCADを一本化するようにとの方向性が根回しされてしまいました。
幸い、決定を行う役員会で私の反対意見に賛同する者もおり(先生もご存じの@@ですが)、結論はペンディングとされたのですが、一ヶ月以内に同等若しくは以上のコスト削減案を提示できなければ一本化の方向で行くという条件を、経理担当の副社長に下されてしまいました。
そこでご相談ですが、設計行為そのものを良く理解できていない役員達にも分る、画期的なコスト低減策、及びCADを無理に統一することにより生ずる無駄をアピールする方法はありませんでしょうか。
<後略>
<前略>
まず、画期的なコスト低減策は、Pro/ENGINEERのメンテナンス契約を全て停止することです。
CAD統一派が仕掛けて来た内容では、いくら値引きをすると言っても、変更したCADの年間メンテナンスコストが相変わらず発生致します。また別なCADに入れ替えると言うことは当然戦略的な大幅値引きがあったとしても、幾らかの新規購入コストは発生するでしょう。
ところがメンテナンス契約を全て停止するという事は、この費用が完全にゼロになると言うことで、これ以上のコスト低減は無いはずです。恐らくこれだけでも充分に統一化は阻止できるはずです。
と言うより、「我々の事業部は、しばらくの間CAD購入・メンテナンスにコストを発生させる気は無い」と宣言すれば済んでしまう話と考えます。
要するに「統一化を目論むCAD導入のための費用を費やし、そのメンテナンスコストを発生させる気もない。そして既保有のCADを使い続けるが、これのメンテナンス契約は停止するので、コストは発生しない。」と言う論法です。
合わせて以下に示すようなCADを変更することによって生ずるコストを端から拾い出し、CAD統一化が如何に愚かなことかをアピールすべきです。
以上を具体的数字にして、役員会に報告されると良いと思います。合わせて、これらの数字をはじくために費やしたコストも列記すべきです(現場を知らないIT部門の思いつきで、無駄なコストを割かせるな!と)。
尚、メンテナンス契約を停止することによる不安が残ると思います。しかしPro/ENGINEERの機能拡張は、既にかなり下火になってきており、機能拡張の面では現状のバージョンで固定したとしても、皆さんの設計行為に何ら支障が生ずることはありません。またCADのライセンスは、インストールしたハードが生き続ける限り、未来永劫使用する権利はありますので、この面からも心配はありません。
また技術サポートの問題も気になると思いますが、皆さんのサポートスタッフ達は充分に成長しており、日常のトラブル対応などで困る事はないと思います。もし手に負えない問題が生じたときには、Pro/ENGINEERを使いこなすための支援を、生業としている方々がおられますので、都度そのような方々に助けを求めれば済みます(必要とあれば私が信用できる方を、手配若しくはご紹介致します)。
唯一心配は、搭載しているハードの故障です。しかし皆さんは、CADをフリーズして利用している自動設計システムで、既に充分経験されていますのでその対処方法の説明は省略致します。
もう一つデメリットがありました。新しく出て来るハードの機能やOSの機能を使えないことです。しかし現状で問題なく使えていると言うことは、ここは我慢すべきと考えます。
最後に、将来的にもメンテナンスを停止した状態で置くのか、と言う疑問が生ずると思います。ここは臨機応変に対応すべきと考えます。5年も経てばCADも機能は拡張されてくるでしょうし、ハードも大きく性能を上げるでしょう。
仮にその時点で貴事業部が大幅黒字を出せるようになっていたら、堂々とメンテナンス契約を復活したら良いと思います(5年も経った場合はCADは買い直しになるはずですが、交渉次第で大きく値引きさせることは可能なはずです)。