<前略>
弊社でも近々早期退職者の募集が行われる予定です。経営側の本音としては、オイルショック前に大量採用した定年直前の管理職引退組や、65歳雇用延長組の一掃があり、その規模は数百名になる予定です。
しかしこの年代は、バブル崩壊後の不況時大量リストラの対象となった経緯もあり、既に社にとって不要な人員は一掃されており、私の目から見ると社に不要と思われる人材は一名もおらないと理解しております。
特に私が預かる設計部署には、数十名にのぼる対象者がおり、これまでの様々な開発案件で彼らの知恵に頼るところが多く、必要不可欠な人材としてこれまで彼らを処遇してきました。
当然いつまでも彼らに頼り続けることができない事はわかっており、バブル不況が落ち着いたこの十年来、彼らが持つ膨大な固有技術を、若手設計者に継承しようと様々な取組に着手したのですが、直前までの押し寄せる開発ラッシュに追われて、いずれの取組もうまくいっておりません。
このような実情下での早期退職者の大量募集(実質的には私たちの口からの指名勧奨)経営方針は、私の本音からすれば「対象は彼らではなく役に立たないバブル期の大量採用組にしてくれ」と言うところですが、経営層としてはうるさ型の多いベテラン勢をこれを幸いに一掃したいのだと思います。
弊社の現況から判断したとき、設計部署の特異性を主張して設計部署だけの独自行動を取るわけにも行かず、ベテラン早期退職者が持つ固有技術を漏れなく残す方策を、緊急に取る必要が生じ、お問い合わせさせて頂いた次第です。
先生が提唱されておられます設計思考展開は、このような目的に有効に活用できると思いますが、どのくらいの期間でその技法を取得でき、どのくらいの期間でベテラン設計技術者の固有技術引出ができるのでしょうか。対象人数は少なくとも30名になり、期間的には3ヶ月程度で完結できないかと思っております。
<後略>
私が「設計思考展開」を提唱している目的の一つは、ベテラン設計者達が持つ、後世代に継承すべき様々な暗黙知の引き出し、体系化の道具としての活用にありますので、当然お考えの取組にその威力を発揮できるでしょう。
期間的には、貴社独自で30名を3ヶ月以内に終了させることははっきり言って無理です。全く私の指導無しで技術取得から始めていたら恐らく5年掛けても無理でしょう。私が技術取得のお手伝いを申し上げたとしても、貴社主導でベテラン設計技術者の固有技術引出を行われようとした場合は、やはり3年掛けても無理だと思います。
3ヶ月で完結できるか否かは、貴社の詳細状況が把握できておりませんので断言できませんが、唯一、全ての引き出し作業を私にお任せ頂き、貴社の数名スタッフを拝借して私の指示監督下で体系化作業を行わせて頂く方法ですと、可能性があります。
ご参考にまで、ベテラン設計者のノウハウ(暗黙知)を形式知化する取組のフロー図を以下に添付致します。