質問 | コンカレント設計での技術者は、一握りのエキスパートの能力を最大限に活用し、他はそれをサポートすると言う一種の淘汰とも言えると考えるが、新入社員、若手技術者の育成(日本企業的?)という観点で見れば、どういった考え方、システムでエキスパートの能力を見出し、伸ばして行くのが良いだろうか?、自然または各個人の自主性に任せるしかないのか? |
回答 |
極めて難しい話です。しかしこの部分がうまく行かないと、我が国での米国流コンカレント設計は上手く行かない事になってしまいます。
以下は、私どもと先進している数社で試行錯誤を積み重ねながら、ある程度収束させてきた方法の概要です。
@ エキスパートの発掘
真にコンカレント設計を担える技術者は、最低限以下の能力が要求されます。
私どもは、入社2〜4年目(それぞれクライアントの社員教育計画と連動させて)の若手設計者に対し、これらの能力有無の確認をまず行なっております。
a.b.の能力については、取りたてて何らかのチェック方法を取らなくても、チームを組む先輩や、上司には自ずと解る部分でありますから、人事考課の職能評価の一環としてチェックする仕組みが一般的です。
ただし、人事考課を行なう直属の上司だけですとその評価が偏る危険性が有るため、部単位、センター単位で、他の部・課長や係長からの職能評価を受ける仕組みを講じる等して、評価偏りを防ぐ手だてを工夫しております。
この場合、直属の部下以外は、全員を評価する必要はなく、自信を持って評価できる対象者だけに、プラス側の評価を与える方式を取ってやると良いと思います。これだけで、十分直属の上司の人を見る目の無さや好き嫌い等が排除できることにな
りますので。
c、dに付いては、まさに実践の中からその能力を見出すしかないところです。
日常の設計業務の中には、それほど重要度は高くないが、c、dで求める能力を
発揮しないと、スムーズに事が進まない業務が必ず有ると思います。そしてこの様な
仕事はベテランの方々が自ら処理したほうが効率が良いと、若手に任すことをせずに
済ましているケースが殆どだと思います。
この様な仕事に積極的に若手を充てることでその能力(素質)を見出すことも出来ま
すし、また彼らはここで失敗を経験することにより、伸びることに成ります。
特に失敗を経験した後の、総括の行い方、それからの成長などがエキスパートを発掘
して行く上での大きなチェックポイントになりますので。
@ エキスパートの教育
本人の自助努力と、実務経験の積み重ねがそのほとんどになると思います。 座学や外部セミナーなども無意味では有りませんが、あくまでも補助的手段です。 彼らの手本となる、エキスパートの先輩に付け、より多くの場面を経験させることです。 また多くの失敗を経験させ、自らの力でその失敗から這い上がってこらせることです。 このためには、周りの育てる意識も重要ですし、我慢は必須となってくるでしょう。 また、上で補助的とは申しましたが、別途カリキュラムを組んでの、彼らだけに的 を絞った、集中教育も効果が有ります。特にCAE活用技術や、品質管理、実験計画、 品質工学等はこの範疇に入り、彼らがこれらの技術を彼ら自身の設計ツールとしてフ ルに活用できるようになると、さらに強力なエキスパートが育つことになります。 しかし、この教育参加者が受け身であった場合には、即刻その参加者の教育は停止す べきです。 教育の効果が上がらないばかりか、周りに計り知れない悪影響を及ぼしますので。 あくまでも大前提は、エキスパート候補者達の自助努力です。