米国製造業とは文化が違うことを念頭に!
米国製造業の設計部署と我が国の設計部署とでは、ここ30年来間その進歩の文化が大きく異なっていた。
米国はフォードの大量生産開始以来、世界工業推進者の役割を果たし、数々の成功体験に基づく膨大な継承技術や固有技術を保持していた。また極めて緻密に定められた業務マニュアルにより、設計者の持つ責任は極めて細分化されており、彼らはマニュアルに従って設計を進めていれば、それ以外の責任は問われない体制になっていた。またその仕事の進め方はシーケンシャル設計の方式を基本とし、前工程の担当者が完全にその分担を済ませたら、始めて次の工程の担当者が設計を開始する仕組みになっていた。当然戦後我が国で持て囃されたTQC的な発想や試みは全くなされていなかった。
一方我が国は、第2次世界大戦での壊滅から立ち直るべく、産官一体になっての無からの再出発が原点、それまで皆無に近かった品質管理の弱点を克服すべくQCの導入からTQCへの発展、TQCをベースとした日本流コンカレント設計の編み出しへと続いて来た。 その日本流コンカレント設計と米国におけるコンカレントエンジニアリングの決定的相違点は、先に述べたように我が国のそれは、部・課単位での共同運命体組織による並行協調設計であるのに対し、米国のそれは一人一人の設計者個人に基づいたシステムである所にある。
このような背景を基に、米国でのコンカレント化や3次元CAD化は進められており、また主に米国から供給される3次元CADは、米国の事情に合わせて作られているため、これを十分理解した上での3次元CAD導入検討・実用化施策が必要である。 さらに、3次元CAD導入だけではなく、コンカレント設計導入の試みが多くの製造業で行われるであろう。コンカレント設計は、元々、我が国製造業の多くで行われていた、TQCに根差す製品開発手法の焼き直しであることを、十分認識する必要がある。かつて自社が、TQCで何を行って来て、どのような蓄積が有り、今何が問題なのかを十分に把握したうえでの、コンカレント手法導入が必要である。