設計者が駆使する3つのモデル 連載1


「一流設計者ならCAEは使いこなせる」と言うのが私の持論である。
製品の開発過程では、設計者達の手により、数々の検討作業が繰り返される。
その段階で設計者達が駆使するモデルに、「設計モデル」「試作・実験モデル」、そして「解析モデル」の3つのモデルがある。
 まず「設計のモデル」とは、設計図面やCADデータ、設計書などに盛り込まれた、設計者の意図を具現化した物を指す。これは、設計者達が持っている経験や設計のノウハウ、企業の技術継承技術等をベースに、それそれの設計者が作り上げてゆく物である。
 「試作・実験のモデル」とは、設計者の構想を実際の形として作り上げ、機械としての成立を確認するモデルを指す。このモデルには、機械要素の働きを確認する目的の、確認目的外の部分を取り去ったシンプルなモデルから、その機械の製品としての品質を確認する目的である、最終試作・実験モデルまで、その目的用途に応じた試作・実験モデルがある。
有史以来、物作りにおいては、設計者の構想を試す手段としては、この「試作・実験のモデル」が中心的な役割を果たしてきた。設計構想を"作って""試して""また考える"の繰り返しで、実現して行く流れである。
余談になるが、CAE等のシミュレーション技術が一般化する前までは、自動車やA・V、家電、情報機器の分野では、設計構想案に対し、"即、物を作り"、"即、試してみる"と言うアプローチが、至極当たり前の行為であった。そして未だにこの文化から、多くの製造業は脱却できずにいる。

(続く)