CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所


IT立国に失敗したのは我が国行政の大きな判断ミス




■質問■

私の講演に際して行ったアンケートで、用紙に記載された質問事項の転載を致します。

<質問事項>

IT立国に失敗したのは我が国行政の大きな判断ミスと言うお話がありましたが、もう少し詳しくご説明下さい。

■回答■

未だに、脳天気な学会や、官に近い輩達からは、「我が国は頭で飯を食って行くしかない」「IT立国こそが我が国の生きる道」など漠然とした物言いがなされています。しかしその具体策は全く無いと言っても良いでしょう。

特にIT立国を目指すなら、何で明らかに技術的な先駆性が高かったTRONを、米国の圧力に屈して葬り去ろうとしたのか、“官”や“学”の無知と場当たり的な姿勢が問題でした。「このような先見性の無さと、愚策の繰り返しが、我が国製造業の苦境を招いたのだ」のですから。

仮に我が国政府が、米国と対峙しながらこのTRONを巧く育てたとしたら、恐らくマイクロソフトやインテルと並び、我が国のIT関連企業が、世界のIT業界を仕切る立場になれたでしょう。そして状況次第では、世界のIT業界や家電業界をその支配下に置くことも可能であったかもしれません。

安全保障という弱みを握られていることもあり、米国と全面対峙を行う事は不可能としても、当時はマイクロソフトと互角に競っていたSUNマイクロなどを巧く取り込み、もう少し有利に戦う選択肢もあったはずです。当時の成り行きを、田作の歯ぎしの思いで見守っていた私の憤りは、未だに覚めておりません。

TRONとは

TRONは、the real-time operating system nucleusの頭字を取った名前である。

1984年にスタートしたTRONプロジェクトでは、将来の人類社会では日常生活のあらゆる部分(様々な家電から電球1つや壁パネル1枚)にまでマイコンが入り、何らかの形で人間と関わりを持つようになると予想した。そしてこれらのコンピュータを、それぞれの機器毎にバラバラに扱うのではなく、標準OSを用いてうまく連携させると言う目的を立てた。

要するにコンピュータだけではなく、ありとあらゆるITがくみ込まれた物を、共通のOSで連携管理すると言う考え方である。