私の講演に際して行ったアンケートで、用紙に記載された質問事項の転載を致します。
<質問事項>
設計思考展開(DPD)を用いて設計の目的が明確になるとどのようなメリットがあるかもう少し詳しく説明下さい。
設計思考展開(DPD)は設計の目的を明確にする特徴がある。設計の目的が明確になるとどのようなメリットがあるか、複数の設計者がチームを組んで設計を行っている場面での、溶接板金部品設計の場合を考えてみましょう。
溶接板金部品の品質を高めコストを低くするには、なるべく流通性の高い形鋼などを使用すると良く、また寸法的に品質の高い物とするには、必要以上に複雑な構造や、溶接構成にならないことが必須です。このような注意を絶えず心がけることが、短期間での商品開発や、極限までコストを抑えた商品開発を実現する大きな要因になります。
なるべくシンプルな構造にするために、補強リブやクロスメンバなどを削減しようとしても、たとえ設計要件を全て知り尽くしている構造でも、一般の設計者では、その剛性上の不安がありなかなかやめることが出来ません。ましてや他のユニットを載せて、ある目的を持った動きをさせなければならない場合はなおさらです。そのユニットが求める要件を十分に把握できないと、溶接板金構造を設計する設計者は、無駄かなと思いながらもオーバースペックな設計を余儀なくされます。
ところが設計の目的が明確になったらどうでしょう。不必要な補強リブやクロスメンバなどはもとより、不必要な肉厚などまで、製品形状の細分に迄わたる、設計意図に基づいた設計構造や形状の要否が吟味できるようになります。こうなれば溶接板金部品設計者はユニットを担当する設計者とも議論しやすくなるのは請け合いです。
さらに私は、溶接板金部品設計者が、ユニットを担当する設計者と議論しやすくなる程度では、満足していません。その構想設計段階から、機械全体が適切な品質であり、適切なコストになるように、各部品の形状や機械構造を決め込んでゆこうと言う目的です。この面から見たとき、設計の目的が明確になることは極めて重要な意味を持ちます。