<前略>
先生のお話ですと、「コンカレント開発という視点からも、商品企画の段階からCAEや3次元CADを駆使して」と言うお話ですが、具体的にはどの程度のレベルにまで、これらのツールを用いて設計内容を落とし込めばよいのでしょう。
<後略>
商品企画の段階では、「徹底したフィジビリティースタディを成し遂げるために必要なレベルまで設計内容を落とし込む」と言う所が回答になります。
私の提唱致しますフィジビリティースタディには、世の中で一般的に言われる構想設計から一部詳細設計までが含まれます。この段階で、“ざっくりとした設計を、知恵出しという意味で複数案行い、開発の目的に叶う案に落とし込む取組み”“重要な機能部分はシミュレーション迄をも行い素性の良い商品の骨格を固めること”などが中心になります。
なぜならば、精度の高い量産コストの予測は、それなりに固まった設計結果がないと不可能だからです。当然これらの作業は極めて短期間に、色々な設計案に対して行う必要があります。
営業部署から、「競合品との差別化のためにこの様な機能が欲しい」と言うリクエストがあったとき、その場で粗い3次元図面を作ってしまい、そこで重要な機能は、シミュレーションも含めて行ってしまうわけです。
従来製品から対象機能の設計結果が、フィジビリティースタディ参加メンバに容易に読み取れるような場合は、横睨み表でも良いのですが、従来多くの製造業でこの方式を取って来て、大きな失敗を重ねてきたはずです。
所が筆者が唱える方法ですと、具体的な形や、予測性能データ、さらには量産コストまでが具体的な予測データ値で示されます。そして、商品企画の人達なりに分かるかたち、見えるかたちで示してあげるわけです。
そうすれば自ずと出来ない要求、コストがとても割に合わない要求はこの段階で淘汰されることになります。
例えば、射出成形品で物凄い複雑な金型を作らないと出来ない様な商品機能の要求があったとします。営業や商品企画サイドからは、「競合品がこの機能を織り込んできたのだから追従せざるを得ない」と言う要求根拠が示されたとしても、物凄い複雑な金型が費やすコストを具体的にはじき出されると、別な手段で対抗すべく全員が知恵を絞ることになるでしょう。
例えば、「こんな商品を作ったら売れる」という様な思いつきに近い要求が、発言力のある立場の人からでたとします。その時に、具体的な形や、予測性能データを作り、さらに物作り側の知恵を寄せ集めで量産コストを試算してやるわけです。「あなたの思いつきだと、従来品に比べて値段が5倍になりますよ」「それでもやりますか。」・・ついでに対象になるマーケットボリュームから売り上げ規模の予測までを行うとさらに説得力を増すことになります。
それでも、他社に先駆けて新機能を織り込んだ商品を、マーケットに投入すると言う事に、メリットがあるという判断も、当然あり得るわけです。そのときには、フィジビリティースタディの検討記録や、DR0の審議資料に、その旨を明示させることで、仮にその思いつきが失敗したときの責任の所在を明確にすれば良いわけです。
「他社に先駆けて新機能を織り込んだ商品を開発することにより、絶対売れる」。と言った人を明示するわけです。蓋を開けた結果売れなかった責任は、これで明確になります。
実はこの取組み、営業マンや商品企画マンを定量的に採点する仕組みにもない、無駄な開発をしない、開発途上で仕様変更を犯さなければならない開発をしない歯止めとなります。