割合息の長いコンシューマ製品を、その主力商品とする製造業に、単発コンサルテーションを行ってきたので、その問題点の概要を紹介する。
会員諸氏が所属する企業で、同様な問題を抱えているところもあるのではないかと思うので、改めて自社の状況を見直されることをお薦めする。
尚以前も述べたが、通常私が行ったコンサルテーション内容を、このように公表することは、絶対に無い。しかし本件は、本ホームページを始め雑誌や講演などを含めて、その内容を公表しても良いという条件で、廉価な料金で引き受けた話なので、心おきなく皆様に紹介させて頂く。当然何処の企業かは、絶対に判らない内容にすることが条件だが。
コンサルテーションにあたっての最初の相談は、「製品出荷後のクレーム対策費用が減るどころか漸増している。フィジビリティスタディーの徹底で画期的にクレーム対策費を減らせるか」と言う内容であった。
私が手がけてきた製造業では、フィジビリティスタディーの徹底でクレーム対策費を、限りなくゼロに近づけた実績が少なからずあり、殆どが大幅削減を成し遂げている為、「アプローチ次第では大幅削減は夢ではありません。」と言う回答の下、現状をヒアリングする場面を設定して貰い、訪問の運びとなった。
ヒアリングを行ってみたのだが、私の著書などを大分参考にして頂いており、商品企画段階から割合しっかりしたレビューを行っていて、品質目標の設定やコスト設定も初期段階からしっかり行われていた。また報告を聞く限り、それらに対する試作評価もしっかり行われていた。その時点にまで聞き出した内容からは、問い合わせの切っ掛けになった、膨大なクレーム発生など到底起こりえないような、ほぼ及第点の開発の進め方であった。
そこで視点を変え、クレーム対策費用の大きかった順に、100件ほどの具体的なクレーム内容、その対策内容、発生原因などを聞き取って行くと、開発終盤段階の部品調達先決定に問題がありそうだと言うことが読み取れた。
さらに問題のあった部品やユニットの、試作段階で用いたこれらの調達元と、量産以降で用いている調達元、量産途中で調達元を変更している場合はその変更されたロットナンバーなどを調べ、作表するように指示を出し、翌週に再訪問をおこなった。
結論的には、7割は試作評価で用いた部品やユニットと調達元を変えていた。2割は同一調達先だが、調達先で設計変更が加えられ、変更伺いが申請されていた。何れもコストダウンが目的の変更である。
そこで、それぞれの調達先変更や設計変更に対してどのような品質確認を行ったかとの質問に対して、「同じ図面で製造させ検査させるので、特に自社側の品質確認は行っていない」「サプライヤー側の品質報告書で、変更前と品質低下が無いことを確認した」等々の回答がなされた。
「それぞれの部品やユニットに対して加速試験等は行わなかったのか?」との当方の問いかけに対しては、「・・誰も無言・・・」と言う有様であった。
要するに、コストダウンを目的とした調達先変更や設計変更に対して、充分な品質評価が出来ていなかったと言うことである。
信頼性の優先度を下げた廉価部品選択は、結果的には高く付くと言うことを肝にめいずるべきだ。また部品やユニットの調達先変更や設計変更は、単に部品単価だけではない、品質確認の為のコストが発生することを忘れてはならない。
なお参考にまで触れておくが、残りの一割は特定の部品やユニットにトラブルが集中しておらず、部品やユニット単位で見ると1〜3件程度の発生件数に止まっていたため、製造・加工品質のバラツキと判断した。当然受け入れ検査を厳しくすれば、発生件数はさらに下げることが出来るはずだが、「検査コスト増加分とクレームコストの睨み合いで判断すべき」とコメントした。