<前略>
弊社の製品開発部署における仕事の進め方や設計者達の意識は、私が入社した30余年前から全く変わっておりません。
たしかにCADが3Dに変わったり、全員にPCが配布され、エクセルを使った設計計算や、情報検索、文書作成などがデジタル化するなどの道具の面からは大きく変わったのですが、設計の進め方や設計者の意識などの根本的なところでは全く変わっておりません。
さらに始末が悪いのは、新規に供給されてくる人材の能力低下が甚だしく、昔のような“盗んで覚えろ”“自助努力で伸びろ”では育ちが悪く、結果として昔は当たり前だった“部下に丸投げ”で、円滑に仕事が回ることなど到底無理な状態に陥っております。
このため50代以上の幹部クラスへの負荷が異常に多くなり、そのキャパシティーの制約で営業サイドから要求される開発案件の半部以下しかこなせない状況がこの10年余り続いております。
しかも昔からのとにかく試作を作った上で問題出しをして、問題潰しを試行錯誤的に行ってゆく開発手法を使っているため、開発期間遅延が軒並みに起こり、この部分でも開発案件を減さざるを得ない状況に陥っております。
ところが、開発トップ以下開発関係部署の幹部達は私を除き、「優先順位を付けて事業収益に寄与度が高い物に絞り込んで開発しているのだから問題ない」と、上記の問題点を指摘する私に対して、一向に危機感を持ってくれません。
しかし私の目から見ると、没にされた開発案件の中には、明らかに事業規模を倍増できるような案件も含まれており、現に競合他社がその案権に類する新製品を大ヒットさせてしまい、慌てて弊社でも追いかけ開発に迫られるどたばたを、この十年の間に7回も経験しております。
明らかに弊社は、先生が提唱されておられますフロントローディング設計や、計画的な人材育成、フィジビリティースタディーなどを導入して、大幅な設計プロセスの改革を行うべきと考えているのですが、私一人が空回りしているお粗末な状況です。
過去多くの製造業に対して指導を行ってこられた先生におかれましては、少なからず弊社に類する製造業を、改革に取り組ませたご経験があるのではないかと思い問い合わせをさせて頂きました。
弊社の様なケースでは、どのような手立てで幹部達の意識を変えさせることが出来るのでしょうか。
<後略>
かなり致命的な状況と診ました。
頂いた情報と私のこれまでの経験を重ね合わせますと、恐らく貴事業存亡の危機に陥らない限り、彼らの意識は変わらないでしょう、しかし変わったとしても時遅しで、最後の悪あがきをしながら消え去ってゆく運命と診ました。
改革には時間が掛かります。余力があるときに取掛かり実現させておかない限り、場当たり的な改革しかできませんので。
唯一可能性があるのが、これまで改革に取り組んできた他社の状況を皆さんにお知らせする事です。ここで幾ばくかの危機感を抱いてくれるのであれば、改革の端緒にたどり着ける可能性はあります。
私にご依頼頂ければ、半日程度の講演で問題の方々に、充分危機感を持たせることは出来ると思います。