CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所


ジャストインタイムなどの表面的なメリットを過信して、自社の生産規模や製品特性を無視した過度な在庫圧縮は、企業活動そのものが立ちゆかなくなる




■質問■

<前略>

昨秋親会社から出向してきた財務・経理担当の執行役員が、最近盛んにJIT(ジャストインタイム)の導入を要求してきます。赴任後3ヶ月余り当社の財務状況を詳細に検証した結果、在庫費用の圧縮が急務という結論からの要求です。

しかしこの件は、10年ほど前に先生にご指導頂いたときにも打ち出され、先生にJIT導入推進勢力を論破して頂いた件の蒸し返しですので、当時の録音を問題の執行役員に聞いて貰おうとしたのですが、「何処の馬の骨とも判らないやつの戯れ言など聞くに値しないと」けんもほろろな応答で、我々としても手をこまねいている次第です。

当時を知る社長以下が、「他品種少量生産の当社には、JITは向いていない」「現実的にJITを導入した場合に、対応して貰える協力会社や部品サプライヤーが皆無であり、無理に強制しても部品単価の引き上げをもたらし、やぶ蛇の結果になる」「大手自動車メーカなどと違い、当社のJITを強制的に押しつけることが出来る協力企業は皆無、かえって取引を断られてしまう」など説得を行うのですが、一向に聞く耳を持ちません。

逆に「あなた方の購買戦略がなっていないからではないのか」「あなた方が協力企業を甘やかしているのではないのか」など、現場の苦労を踏みにじる不届きな発言をしでかす始末です。

このような者を、説得・論破できない我々も情けないのですが、多くの製造業を手がけておられる先生でしたら、弊社のような状況に陥っているところも少なからずご覧になられており、その対処の方法もお心得ておられるのではないかと思い、ご相談をさせて頂きました。

<後略>

■回答■

10年前に私が、JIT導入推進勢力を論破したときの、パワーポイント資料を用いて説得するしかないでしょう。

貴社製品の製造特性を考えたとき、JITを導入し部品在庫コストを最小にした場合、部品供給遅れや部品品質不良による生産停止が頻繁に発生して、生産計画に従った生産量を確保出来ず、商品不足(玉不足)によるビジネスチャンスの逸失や売り上げ低下が確実に起こることを、様々なパターンを挙げ、定量的に検証したはずです。

また貴社の部品在庫は、製品在庫過多を犯さない、商機逸失を犯さない、売り上げ低下を犯させない必要悪(部品在庫で調整することがコスト的に最も優位)であることを証明したはずです。

さらに取り上げたパターンは、貴社で過去5年間に実際に発生した、貴社に起因する突発事故や、神戸の震災による協力工場の稼働停止、大雪による名神高速ストップなどの外的要因の、具体的データを元に、シミュレーションを行っておりますので、問題の方も異論を述べようがないはずです。

費用を頂ければお邪魔して、プレゼンターに事前指導を行うことも吝かではありませんので、ご指示下さい。問題の方が私のプレゼンでも良いと申されるのであれば、直接論破させていただくことを喜んでお引き受け致します。