<前略>
弊社では、20年近く前に雑誌記事で先生が提唱されておられた考え方に賛同して、試作検証の短時間化を図る目的で、光造形のラピットプロトタイピング装置を導入して活用して参りました。
おかげさまで樹脂部品の試作迅速化が図る事が出来、徐々に価格が下がり機能が向上した新機種を定期的に追加導入しながら、大いに重宝して参りました。
数年前より、3Dプリンターなる呼称で世間的に持て囃されるようになった今、先生の先見の明には敬服させられる次第です。
さて今般、新機種導入のタイミングが近づいておるのですが、金属系のラピットプロトタイピング装置を導入して欲しいと言う要求が多く、検討を始めているのですが、弊社のような製品群で、金属系のラピットプロトタイピング装置も頻度多く活用できる物なのでしょうか。
<後略>
アルミなどのダイキャスト部品を各所に用い、僅かですが機械加工の機能部品を用いている貴社の製品を考えたときに、数年前なら「未だやめておきなさい」と言うコメントをしたと思いますが、現状なら「YES」とお答え致します。
何故なら、試作検証の短縮を目的とした、試作部品調達短縮の目的なら、既に活用されている光造形装置と金属無垢材からの削り出しで、充分迅速にダイキャスト部品や機械加工部品が調達できるからです。恐らくロストワックス的な手法で、ダイキャスト部品の試作をされておられるのではありませんか。
それに対して2年前のSLS(Selective Laser Sintering=選択的レーザー焼結)法ラピットプロトタイピング装置は、極めて高価であったため、貴社のような環境では投資対効果が期待できないからです。
しかし3D Systems(DTM)が持つSLSラピットプロトタイピング装置の基本特許が2014年に切れたため、価格の大幅に安い(1/10)製品が次々とリリースされ、これなら貴社でも投資対効果有りと判断して、「YES」としたわけです。
余談ですが、SLSで作成した試作部品は、量産品に用いると同質の材料(金属粉の焼結だが)を用いることが出来るので、引っ張り強度や耐久強度などは実部品に劣るとしても、同比重・同ヤング率なら振動特性は同じになるし、歪みゲージ計測値も同じになります。
例え耐久試験にかけることが出来なくても(耐久試験にかけ早く破損しても)、充分に実部品を用いた場合の性能が予測できるわけで、極めて有用と言えるでしょう。
参考までに以下の情報を補足しておきます。
SLS法は、テキサス大学のJoseph J. Beaman教授が中心となって、1986年に設立された研究プロジェクトが始まりです。1987年にSLS造形装置の製造販売を目的とするDTM社を設立し、基本特許は同社が持っておりました。その後2001年に3D Systems社にDTM社が買収されたため、2014年までの基本特許保有者は3D Systemsでした。
SLS法には直接法および間接法の二つがあります。直説法は、金属粉末を高出力のレーザーで、直接溶融凝固させて積層造形する方式です。間接法は、比較的融点の低い金属粉末と対象金属粉末を樹脂で被覆させ、低出力のレーザーで溶融凝固(樹脂だけを)させ積層させてゆく方式です。樹脂の脱脂、金属粉を焼結させる熱処理が必要となります。
前社には切削など以外の後処理が不要というメリットがありますが、高出力レーザーを用る事で生ずる様々な問題点が、デメリットとしてあります。
後者には、前社に比べて低出力レーザーで済むというメリットがありますが、樹脂の脱脂、金属粉を焼結させる熱処理が余計な作業となるデメリットがあります。
SLSラピットプロトタイピング装置が、この程度まで使えるのだという実例の動画アドレスを記しておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=cAMi43i2TMk