CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所


海外展開で手薄になった中堅設計者を充実させたい




■質問■

<前略>

今に始まったことではないのですが、生産拠点や開発拠点の海外展開に伴い、丁度設計者として良い働きをしてくれるであろうと期待されている、30歳代の優秀なメンバーが次々と海外赴任させられてしまう状態が続いております。

赴任先への順応度や現地メンバーとの良好関係を築くうえで、固まってしまった40歳代や、未熟な20歳代を赴任させるより良いだろうとの会社判断は判るのですが、我々設計部門としては、折角育った人材を活用できないジレンマに悩んでおります。

当然開発力の面から見て良いわけが無く、40歳代と20歳代の年代格差を筆頭に、好ましくない問題点が山積しております。

一方30歳代が全くいないわけではなく、将来の設計部署を担ってくれるであろう者達は、人事サイドからの要求をはねつけて死守しているのですが、残った彼らに対する業務上の負担がとてつもなく重い状態にあります。

元々優秀な上に、ある程度の規模のチームを任せられるレベルに育っておりますので、どうしても彼らに重要な仕事が集中し、彼らに異常とも言える負担をかける結果となっております。

この問題は10年以上前から分かっており、前任者達もその打開策を模索していたのですが、これと言った効果的な策を見出せずに現在に至っております。

そこでお尋ねしたいのですが、他社でも同じような状況にあると思うのですが、どのような策でこの問題を解消しているのでしょうか。

<後略>

■回答■

長年私が関わってきたケースでは、10年スパンの長期レンジで手を打っておりますので、ご質問の面からは特に問題を起こしているケースはありません。しかし人材育成まで私が関与できない先では、貴社同様の問題点を時々見かけます。

この“10年スパンの長期レンジで打つ手”ですが、それほど難しい事ではなく、海外赴任要員を供給することを見越して、新規に配属される設計要員を、実質必要員数の数倍は確保して設計部門で引き受けることです。そしてこの中から将来の設計部門を担って貰う者、海外拠点も含め他部門の管理等を担って貰う者に徐々に分別して、それぞれに適した育成を施してゆく取組です。

私がこの提案を行うと、大抵の客先で「設計部門の固定費が上がってしまう」と一笑に付せられそうになります。

しかし多くの製造業で設計部門は、伝統的に人材育成・供給部門の役割を果たしてきたはずです。私が各所に展開して貰っている“打つ手”は、この人材育成・供給部門の役割を明確化して、全社の取組として認知させた上で、育成部分の固定費は人事部門への振り替えという形で、固定費増の問題もクリアーして貰っております。

さて貴社のケースでどのような手立てを打てば良いかですが、私の“手立て”を採用頂いてもその効果が出るまでには、10年近く掛かってしまいます。

ではそれまでのつなぎをどうするかですが、やはり中途採用を大量に確保して、専ら海外赴任要員として促成する方法をお薦め致します。中途採用のメンバーが海外赴任させられるレベルに育ったら、海外にいる設計出身者と入れ替える形で赴任させる目的です。ですから固定費勘定は、上記と同様人事部門費としてが前提です。

当然中途採用者の中には、将来の設計部署を担わすことが期待できる者も紛れているでしょう。この場合は、そのまま設計部署に残せば、さらなる中堅拡充に繋がります。

一方海外に赴任している設計出身者の中には、将来の設計部署を担わせる要員としては、不適な者もいるはずです。この場合は、特に中途採用を育成した要員と入れ替える必要はないと言うことになります。