<前略>
弊社では、共有技術情報を技術情報専用サーバーに登録して、全文検索エンジンを用いて技術の共有化を図っております。
しかし、設計品質向上という側面から見たときにこの共有技術がうまく活用できておらず、過去に起こした失敗を繰り返すような好ましくない状況が頻発しております。
そこで社内で色々検討して参りましたが、最近インターネット検索などで用いられている人工知能を活用できないかという話になって参りました。
そこで長年設計技術情報の共有化やIT化等に取り組んでおられます先生の見解として弊社の方向性は誤っていませんでしょうか。
<後略>
お問い合わせの内容の前提情報が少ないために、的確にお答えできるか否か疑問ですが、AIを用いた技術情報検索は未だ現実的ではないと考えます。
恐らく検索者が打ち込むキーワードから、人工知能を用いて検索者が何を捜したいかを推論して、より的確な情報を提供しようという目論見だと思いますが、現状のAI技術では無理だと思います。
その証拠という意味では、AI技術を用いた汎用の検索エンジンが、商品として一般化していない状況からもお察し下さい。確かに最新のニュースで、GoogleがRankBrainと呼ばれているAIシステムを用いていることが公表されましたが、まだこのような段階にあると理解して下さい。
結論から言うと、貴社では無い物ねだりをしていると言うことが言えると思います。
さて一方、貴社では本当に技術情報の共有化が図られているのでしょうか。“共有技術情報を技術情報専用サーバに登録して”と言うフレーズが気になります。
共有技術情報を登録すると言うことは、その技術情報を含んだ資料や文書を、“誰かが”共有化が必要だという判断をして、専用サーバに登録すると言うことだと思えます。
しかしこの方法だと、本当に必要な情報が個人のPCに埋もれてしまう事が起こりませんか。
私は常々、技術情報の共有化は、誰かにそれを選ばせるのではなく、あらゆる情報を共有化出来る仕組み作りが必要だと説いて参りました。具体的には、技術部門のあらゆるPCのファイルホルダを共有可能にしておいて、全PCを定期的に全文検索エンジンを巡回させる方法です。
一方AIを用いて検索補助をさせようという目論見は、「情報は充分あるのだがそれを活用しようとする設計者達が、必要な情報を巧く検索できないからだ」と言うことだと思いますが、それは違います。なぜそうなのかは以下の引用文書を参照下さい。
<筆者連載“グローバル競争を勝ち抜く”攻め“の設計改革講座”より引用>