<前略>
10月16日掲載分に“PTC Creoが出てからは、弊社に類する製品を扱っている製造業では、最大73%の設計工数削減が出来たなどとのセールストークで”という一節がありましたが、これで本当に設計の生産性が倍増できるのでしょうか。
<後略>
皆さんもおわかりだと思いますが、一般的に設計という作業は、製図工数が大半を占めるわけではありません。設計の目的に従いそれを具現化する手段を考えたり、その設計案を検討し、検証する作業がその多くを占めるからです。
また設計(開発)途上で、何らかの不具合を生じさせた場合には、その不具合の現象を明確に把握して、原因究明のうえ対策案を考え、その検討・検証作業が必要となります。
これらの作業の内に占める製図工数は、多くの製造業においては、多くても30%程度だと理解しております。
確かに図面ばらし段階に入り、単純な部品の製図行為では、製図作業がその工数の大半を占めます。
そしてこの段階では、パラメトリックフィーチャーのPro/Eを闇雲に用いたなら、製図作業が煩わしくて仕方ないでしょうし、製図工数も馬鹿にならないと思います。一方PTC Creoのノンヒストリー機能を用いれば、最大73%の設計工数削減も不可能ではないと思います。
しかし上記したように、この図面ばらしの作業は、その製品規模にもよるでしょうが、設計行為全ての内の数パーセントにしか過ぎないはずです。
ですから、仮に製図工数が73%削減できたからと言って、設計の生産性が倍増できるわけではないと言うことです。
それよりも、設計(開発)途上で起こる、手戻り後戻りを徹底的に撲滅していった方が、設計の生産性向上には、大きく効果があると言うことです。
また私の関わっている製造業では、Pro/Eユーザーにおける3次元CAD利用場面は、主に構想設計から始まる計画図(設計検討)作業です。この段階では細かいフィレット等は作図しておらず、粗々な図形での部品配置検討(組立性や整備性も含めた)や、部品干渉を避けた部品形状検討などが主な作業です。このためPro/Eの操作に慣れてしまっている今現在では、ノンヒストリーのCADに道具を変えても、殆どその差は出ない状況です。かえって新しいCADに慣れるまで半年余りの効率低下が起こります(実際に複数箇所でベンチマークを行った)ので注意して下さい。
また製図段階(2次元図面作図段階)での効率向上なら、計画図で用いた粗々の3次元形状を3面図投影して、後は2次元機能(若しくは2次元CAD)でフィレットなどの細かい形状定義を行えばよいわけで、この段階でわざわざノンヒストリーの新しいCADを使うメリットはないはずです(私の支援下では、2次元図面を衝としているため2次元図面を作成している。多くも同じだと思う)。
そもそも計画図段階で、詳細形状まで3次元化する必要はないはずです。無いとは思いますが、もしも貴社で3次元で製品形状を徹底的に作り上げているよう用い方をしているのであれば、即改めるべきです。