この問題はもう一つの問題点、「機械のあるべき姿・原理原則が不在」と表裏一体の関係にある問題である。機械のあるべき姿や原理原則が解っていないためもあり、とにかくあらゆる設計アプローチが、作って、壊して(問題を出して)、考えよう(根拠レス闇雲アプローチ)のパターンに陥らざるをえないからだ。
そしてこの問題を解消するためには、まず機械のあるべき姿をしっかり定めて、原理原則を明確化することが必須だ。その上で物に生じている現象を的確に把握して、科学的に問題を解決してゆく文化を植え付けてゆくしか無い。
そしてこの文化が定着できると、現象が生じてからアクションを取るのではなく、先手々を打って、物に生じるであろう現象を予測できるようになる。
ここで指摘した該当事業部の“作って壊して考えよう”の文化は、かつては対象製造業だけが取っていた商品開発のスタイルではなかった。40年前なら、重機械の一部業種を除き、我が国製造業のほとんどが取っていたアプローチスタイルであった。
しかし時代とともに多くの製造業は、問題を事前に予見・予測する、商品開発方法へとそのスタイルを改めている。何故なら問題を事前に予見・予測するための道具立てが40年前から格段に進化したからだ。
ところが該当事業部のでは、この世の中の変化に追従することもせず、しかも、「機械のあるべき姿・原理原則が不在(恐らくどこかで霧散してしまったのだろう)」の中で、旧態依然とした開発スタイルを取っていた。これでは対競合、競争力が落ちてゆくのもあたり前であり、早急な改革を行う必要がある。
この問題点を徹底解消するためには、先手を打った問題予測と、科学的な設計アプローチで設計品質の大幅向上と開発期間の大幅短縮を計るしかない。このためにはフロントローディング開発態勢を確立するしかない。
基本的には、試作段階での堂々巡り、量産立ち上がりの悪さなどの根元にある、“作って・壊して・考えようの体質”を一掃して、可能な限り問題発生を予見して、先手々を打って潰し込むとともに、「作ってみて、問題が起きたら考えよう」「取りあえず何が問題だったか、何が効いたか解らないが、問題点が収まったから、マ〜イイカ!」などの先送りを、一切行わない開発態勢を確立することである。
具体的には、該当事業部には以下の解決案を提示した。