製造業の本分は、“旬でよく売れる商品”を常に開発し続けて、これで稼ぎ続ける事だ。要するに全世界の顧客ニーズにマッチした、安全で高品質且つ適正価格の製品を、より短期間且つ低コストに開発して、常に安定した製品供給が叶うことが、製造業に求められる要件であり、これが製造業の本分だ。
そして、事業に関わるあらゆるメンバが、主体的に動き、この本分を実現してゆくことが、製造業に働くスタッフ(頭脳を使い己の意思を持って事業を動かしているメンバ)に求められている。少なくとも勝ち組企業の常識だ。
ところが対象事業部隊では、全事業関係者一丸となって、明日の糧を稼ぎ出す、良質な商品開発を行わなければならないと言う意識が欠落していた。要するに「コンカレント開発アプローチの不在」状態であった。特にものづくりに関わる、製造、資材、品質保証の各部にその問題を感じた。
そしてこの意識の弊害は、少しでも効率よく進行させないと滞りを起こすシリーズ開発において、致命的な問題を生じさせている。対象事業部隊の実力では、試作機を用いて徹底的に問題出しをして、的確な作り込みを実現させることが必須であり、最も優先されなければならない取組であるはずだ。ところが「開発は設計だけの仕事」と嘯く後工程は、量産を優先して、この必須の取組を行う機会を奪っていた。あきれる状況であった。
そしてこの障害を取り除くために当日次のような提案を行った。「クロスファンクション開発PJチームを設置して、コンカレント開発体制の確立することにより、開発期間の大幅短縮と開発品質の大幅向上を図って頂きたい」と。
試作を専門に行う機能も含めた、商品開発専門の組織を作り、一貫した責任態勢の下、量産業務に制約されることなく試作期間短縮(最短化)を実現するとともに、十分な試作評価期間を捻出することを狙いとした取組だ。
しかしこの方法は、人材の効率活用という側面では無駄がある。コンカレントな開発態勢ができている製造業なら、絶対にお奨めしない組織案だが、対象事業部隊の現状では、この方式がベストな選択と考え、このような提案を行った。
具体的には以下の取組である。