先日、サラリーマン時代に接触があった某製造業にお邪魔して、サービスコンサルティングを行って来たので、その一部を紹介する。一部の内容を、本ホームページに紹介しても良いという前提でのサービスコンサルティングである。
訪問した製造業は、大型産業財(機械)を製造している、戦前からある大手企業である。
その製造業の訪問先の事業部では、全事業関係者一丸となって、明日の糧を稼ぎ出す、良質な商品開発を行わなければならないと言う意識が欠落していた。要するに「コンカレント開発アプローチの不在」の状態であった。特にものづくりに関わる、製造、資材、品質保証の各部にその問題点を多く感じた。
製造業の本分は、“旬でよく売れる商品”を常に開発し続けて、これで稼ぎ続ける事だ。要するに全世界の顧客ニーズにマッチした、安全で高品質且つ適正価格の製品を、より短期間且つ低コストに開発して、常に安定した製品供給が叶うことが、製造業に求められる要件であり、製造業の本分のはずだ。
そして、事業に関わるあらゆるメンバが、主体的に動き、この本分を実現してゆくことが、製造業に働くスタッフ(頭脳を使い己の意思を持って事業を動かしているメンバ)に求められている。
このような視点で対象事業部における商品開発を診たときに、惨憺たる状況が見受けられた。特に設計の後工程である“製造、資材、品質保証の各部”のメンバは、量産設計が終了するまで、「商品開発は設計の仕事」と嘯いて、「量産図面が出るまでは俺たちの出番ではない」と待ちの状態でいる実態があった。「どうせ量産段階で変わるのだから」・・・と言う具合だ。
本来なら開発着手以前にその精度を上げておくべきである、量産時のコストを予測する“試算”作業は、開発を担当する設計者達が、過去の部品単価を元に鉛筆を舐め々、弾き出しているらしい。「図面が無ければ量産原価の見積もりなど出来るわけがない」「だから図面が出来るまでは俺たちの出番ではない」、コンカレント開発が巧くいっていない製造業で、よく耳にする後工程からの声が、短時間のヒアリングにも関わらず多く聞こえた。
さらに、コンカレント開発など無頓着な、対象事業部の後工程の面々は、量産直前の量産試作の段階になると、膨大な設計変更要求を出しているらしい。「これでは作れない」「これでは組みづらくてやっていられない」「調達先の設備では、このような加工は出来ない」等々と言う具合である。
ところが、量産に至るまでには、各段階のDRが行われ、審査すべき必要事項は本来なら漏れなく検討がなされていなければならないのだが、対象事業部の実態は否であるらしい。
建前的には、上記のメンバ達も参加したDRが行われ、試作図面の段階から、ものづくりに対する問題点の検出が、行われなければならないのにも拘わらず、その実態がないようであった。セレモニーとしてのDRを行ったという事実はあるが、“実”が無かったと言う意味だ。
しかも試作評価の段階では、試作品という、実際に形になった製品の姿を見るチャンスを、彼等は十分に与えられている。このように全てのお膳立てがなされているにも関わらず、「試作は試作で、量産段階でどうせ変わるのだから、この段階で設計変更要求をしても意味がない。時間の無駄だ!」「設計とは、本来ものづくりのことを考えて最適な設計を行うべきであり、それが出来ない設計に時間を割いてつき合う筋合いはない」などと嘯いている実態があるらしい。短時間のヒアリングで聞かれた発言だ。
まさにこのような体質を持つ対象事業部の後工程メンバは、先手を打って自工程での最適化を、設計途上から織り込ませようとする意識が欠如していたと言える。そして、先手を打って自工程の最適化を、設計途上から織り込ませる事が、後工程の責務であり、これからの製造業が勝ち抜いてゆくためには、必須の要件である事を、理解させる必要があるというコメントを残してきた。
本ホームページを閲覧されている諸氏の事業体では、このような体たらくは無いと思うが、このような状況に陥らないようにくれぐれも注意をして頂きたい。
この他にも様々な問題点を把握したので追々紹介してゆく。