<前略>
他社も同じだったと思いますが、20年以上前の弊社では、3面図から立体形状や空間をうまく思い浮かべず、設計者失格の烙印を押されて、設計部署から淘汰されていった設計者候補生を多く見ました。中には図面さえ読めれば設計戦力として期待できる者も少なくなく、貴重な人材の流出を防ぐ手立てはないかと、腐心したものです。
そしてその対策手段として3D CADの導入を行い、これら貴重な人材の有効活用に取り組んで参りました。(3D CADの導入には、図面を読むことに苦労する設計以外の部署との緻密なコミュニケーションやデータの連続的活用などの目的もありましたが)。
しかし、我々の目論見に反して、3D CADを用いても、部品の形状認識や空間配置などにおいて「何でこんな設計になるのか?」、と言う設計結果が一部の設計者から提出されてきます。
突き詰めて調べてゆくと、このような設計を行う設計者達は、空間認識能力が劣っていることを把握できました。
そして、CAD販社などが行っているこれらの能力を向上させる講座に参加させたり、書籍を購入して自己研修をさせてみたのですが、一向に改善が見れません。
そこでお尋ねしたいのですが、長年3D CADの普及に携われてこられた先生は、この辺りの何か良い対策手段をお持ちではありませんでしょうか。
<後略>
はっきり言って空間認識能力が劣っている方は、3次元的に入り組んだ製品の設計は無理です。
特に構想設計から詳細計画図に至る、無から形を決め込んでゆく作業では、常に設計者の頭の中に設計案があり、その案をポンチ絵化したりCAD上で具象化し、具象化した物が設計目的に叶っているかの判断を下して、駄目なら元に戻り、良ければ次の段階に進むという作業を繰り返します。
この作業において、設計者の頭の中に設計案の空間認識が的確でなかったら、この一連の作業がうまく行かないことは、理解頂けると思います。
例えその道具が3次元CADであろうとも、3次元空間に設計の目的に叶った形状を決めたり、部品を配置することは、設計者の頭の中にある設計案の空間認識が、全ての元となるからです。
では訓練でこれらの能力を持たせることは出来るかというと、元々劣っている人は無理です。本人にとってもその訓練は苦痛でしょうし、無駄な取組といえるでしょう。利益を上げてなんぼの民間企業では、このような無駄は許されないはずです。
これが書道やピアノの練習のように、一般人の素養レベルでの結果を求めているのであれば構わないのですが、世界先端を走る製品を設計する設計者の能力としては、一般人の素養レベルでは当然不適といえるからです。
これまで私が関わってきた取組では、この問題に対しては“選別と育成”の両面で取り組んで参りました。
選別とは、各人の空間認識能力のポテンシャルを定量的且つ、何が劣っているかを具体的に把握して、“教育・訓練の必要なし”“訓練を通じその能力をブラッシュアップさせる”“教育・訓練を通じて能力を開花させる”“設計者としては諦めさせ営業など新天地での活躍を期待する”の4グループに分ける取組を指します。
育成は、“訓練を通じその能力をブラッシュアップさせる”“教育・訓練を通じて能力を開花させる”に分類された者達に対して、個別のカリキュラムに従い計画的に教育・訓練を行う取組を指します。
具体的な能力把握方法及び教育・訓練方法につきましては、実際に私どもにご支援を依頼頂いてから、お伝え致します。