CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

そろそろ韓国製部品を採用しても良いか


■質問■

<前略>

以前からあったのですが、韓国部品メーカからの売り込みが頻繁にあります。しかしこれまでは、弊社が要求する品質基準に満たない物ばかりで、採用に至っておりません。

部品購入価格を下げようと、積極的に売り込みを受けようとする購買部門は良いのですが、どうせNGとなる売り込み部品の品質検証を行う我々にとっては、どちらかと言えば手間ばかり取られて迷惑な存在でした。

ところが先月、韓国部品メーカの***が持ち込んできたサンプル品は、問題なく弊社基準をクリアーし、部品を分解したり切断してみたのですが、加工も適切に行われておりました。

また価格も現在購入している国内メーカに比べて4割安で、大幅にコスト低減が叶います。

今の円安状態では、どうしても購入部品の価格が下がらず(輸入素材を用いている部品などは値上げを受けざるを得ず)、どうしても購入部品のコスト低減を余儀なくされている現状です。

そこでお尋ねしたいのですが、幅広く国内製造業の状況をご存じの先生なら、韓国部品の信頼度や採用状況の実態を把握されておられると思いますが、上記部品を採用しても良い物でしょうか。

<後略>

■回答■

リスクを覚悟されておられるのなら、採用も一つの選択肢としても構わないと思います。しかし以下のポイントは必ず押さえてください。


  1. 該当部品は、国内メーカを必ず入れて、複数業者に発注すること(必要量の供給が出来ない時、NG品が大量納入された場合の予防措置として)
  2. 該当部品在庫は、その部品納入リードタイム分持つこと(必要量の供給が出来ない時、NG品が大量納入された場合の予防措置として)
  3. 該当部品の受け入れ検査は、原則全品検査とすること(サンプル品や初期納入品は良くても、ある時期から平気でNG品が大量混入することが当たり前)
  4. 契約段階で該当部品代の支払いは、当然のことだが受け入れ検査合格後とすること(前払いを要求されることがあるが、平気でNG品を送りつけたり、納期遅れが当たり前のため絶対に避けること。納品時支払いも同様に避けること。)
  5. 契約段階で該当部品で納期遅れの場合は未払いの上ペナルティ、受け入れ検査でNG品多発による所定個数未達な場合には、合格個数分支払いの上ペナルティを課す旨明記すること(ペナルティルールは解釈差が出ない形で詳細明記して)
  6. 契約段階で該当部品に関する技術打合せなどは、一切日本国内において日本語で行い、電話・メールなどのやりとりも日本語以外は用いない旨明記すること(打合せは録画・録音、電話は録音を全て行うこと)。当然契約書など書類・図面なども全て日本語で。
  7. 契約段階で該当部品でクレームが発生することを前提に、取引開始前に相応の保証金を課すこと(材質不良や材料違い、見えないところの加工手抜きなどは当たり前で起こるため、受け入れ検査で合格しても、強度・耐久性などで製品出荷後、問題が生じるケースが少なくないため)


他にも沢山注意しなければならないことがありますが、これはお手伝いをご依頼頂いた後にお伝え致します。

さて、以上なような、貴社側が取らなければならない取組のコストと、ウォン高の現状を考えると、見た目の4割安が、本当に4割のコストダウンになるか否かは、甚だ疑問です。

またその4割安の価格も、採用半年後には、値上げを必ず言って来るはずです。幾ら人件費が我が国の半額程度とはいえ、該当部品の支配的な価格要因は、素材費と加工機や設備のインフラ費の筈です。輸送コストなどを考えると、国内メーカの4割安では、到底利益が出るとは思いませんので。

と言うことで、私の知見では、止めておいた方が無難という結論になります。

恐らく上記条件での契約では先方が逃げると思いますが、此処を妥協すると必ず痛い目を見ますから注意してください。

また契約をしっかりしていたのにも拘わらず平気で反故にした、若しくはしょうとしたケースもありますのでこの点にもご注意下さい。