<前略>
弊社では20年以上前から商品開発改革・設計改革の取組を行って参りました。
3D CADの導入を皮切りに、CAEなどを用いた科学的な設計アプローチ態勢確立への取組、QCDをバランス良く追求する合理的な設計アプローチなど、その取組は様々でした。
しかしここに来てこの20年を振り返ってみたとき、その取組はどうしても、理想論に辻褄を合わすような表面的な取組が目立ち、しっかり地に着いた態勢が確立出来ているかと言えば、否と言わざるを得ない状況です。
そこでお尋ねしたいのですが、先生がこれまで手がけてきた製造業では、どのようなところに力点をおき、どのような手を打って、より強力な商品開発態勢を確立してきたのでしょうか。
<後略>
より強力な商品開発体制を確立するためには、設計の初期段階で、“高い品質”の設計を実現することです。後追い的な、問題先送り的な商品開発態勢を取っている限り、いかなる取組や、3次元CADやCAE等の高度設計支援ツールを導入しても、部分的な問題解決にしかならず、なかなか改革へは結びつかない物です。
“高い品質”の設計は、単に道具や手法を導入し、その操作方法や活用方法をマスターすれば何とかなるような代物ではありません。どちらかと言えば、その道具や手法導入以前に“質の高い商品開発体制”を確立しておく必要があります。
ところが一般的に多くの製造業では、この“質の高い商品開発体制”とは、相反する大きな問題点が幾つも山積されたまま、また仮に気づいたとしても効果的な処置がなされず、改革着手時点まで至っているケースが殆どでした(これまで私が現状診断を行った先で)。
一部には、これらの問題に気づき、その対策手段として取組もうとされた取組の片鱗や、一部のメンバの危機意識を把握できたケースは少なくありません。
しかしこれらに対しての多くの取組は、それぞれのメンバの、頭の中にだけある問題意識であり、構想の域を脱し切れておらず、的確な改革への取組という視点では、開発関連部署全体としては、その問題解決に役に立っているとは言い難い状況でした。
そしてこれらの重大な問題の殆どは、商品開発に携わる、全関係者(設計関係・営業企画関係・工場関係等対象ビジネスに関わるあらゆるメンバを指す)の“意識”の持ち方で、如何様にでも変わる可能性のある問題でした。
見方によっては、極めて短時間で、一挙に何とか出来る問題でもありますが、逆に言えば、全関係者一人々の意識の持ちようの問題であるために、極めて難しい問題でもありました。
そして私どもが手がけたこれらの製造業に対する取組では、まず最初に“全関係者の意識改革“を行っております。
ただこの意識改革は、概念的な呼びかけなどでは全く役に立たないはずで、私どものケースでは、先に挙げた“現状診断”結果を基に、具体的な証拠を示して、何が問題なのか、どのように直さなければならないのかを、具体的に提示をした上での意識改革でした。