CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

覇気が無い若手設計者達を巧く育成するには


■質問■

<前略>

「機械設計誌」4月号の特集を拝読して問い合わせさせて頂きます。

先生が述べておられます、企業を支える人材育成の考え方には、敬服すると共に御説の通りだと思います。

しかしこの考え方を弊社の現状に適用させようとしたときに極めて大きな問題があり、先生が例示されているようなアプローチで、本当にうまく行くかの不安があります。

具体的には、主に育成対象となる35歳以下の設計メンバー達の影が薄いことです。それぞれ知識的には十分な物を持っているはずですが、その知識と実際に設計物として提出してくる成果物との齟齬が大きく、先生が各所で述べられておられます、「作って・壊して・考えよう」を繰り返し、開発期間の遅延だけでは済まず、量産開始後に繰り返される設計変更、商品出荷後の市場クレームと、まさに先生が最も忌み嫌われるであろう醜態を晒し続けている始末です。

そして彼らに総じて言えることは、とにかく素直です。また工学基礎知識という観点で見たときには我々を凌駕する物を持っております(ように見えます)。

しかし嗅覚的な危険察知能力や、工夫して新しい物を生み出す知恵が欠如しており、過去に経験した失敗などを次にうまく役立てる応用力なども欠如しているとしか思えません。そしてとにかく覇気がありません。

恐らく、このようなメンバーの人材ポテンシャル評価を先生に行って貰い、最適な育成カルテを作成して頂き、彼らへの教育に取り組むのが最も近道だとは思いますが、対象になる人数が500名近くおり、全てを先生にお願いしていたら、費用的な物や、成果に到達できるリードタイム的にも、本当に実現可能かとの疑問が出て参ります。

数多くの製造業様で、様々なご指導を成されてきた先生におかれましては、弊社のようなケースもご経験があるのではないかと思います。

今後我々がどのように取り組んでゆけばよいかを、アドバイス頂けますと幸いです。

<後略>

■回答■

まず、ご質問へのストレートな回答とはなりませんが、貴社の場合、最初に言えることは、私どもの“現状診断”を受診すべきだと考えます。

なぜならば、「「作って・壊して・考えよう」を繰り返し、開発期間の遅延だけでは済まず、量産開始後に繰り返される設計変更、商品出荷後の市場クレームと、まさに先生が最も忌み嫌われるであろう醜態を晒し続けている始末です。」の現象は、単に若手設計者達の生育度合いだけの問題ではなく、貴社の製品開発部署そのものに、重大な問題が潜んでいるのではないかと診るからです。

要するに、若手設計者達の設計能力の問題だけではなく、それをマネージメントする皆さんや、貴社が伝統的に持つ設計文化、さらには開発手法そのものにも問題が潜んでいるのではないかと診ております。

一方ご質問の“人材ポテンシャル評価”と“育成カルテ作り”は、若手設計者育成プロジェクトを組んで、短期間でこれらの取組を完了させる方法があります。これまで私がご支援申し上げてきた先は、貴社同等若しくは以上の人員が対象になったところが殆どですので。

具体的には、まず最初に対象人数の一割程度に対して、“人材ポテンシャル評価”作業を私が行います。この際の私が行う診断(ヒアリング)作業は、全てビデオ撮影致します。

一方、部長クラスの皆さんに、手分けして残りの対象者の評価を行う役割の、ポテンシャル診断チームを組んで頂き、私の診断状況のビデオを、手が空いたときに確認をして頂き、ヒアリング要領を疑似体験して頂きます。

私のヒアリングが一通り終わったら、診断チームのメンバー全員と、私が付けた評価点に対して、上司や先輩として診た、評価点の妥当性を忌憚無く述べて貰い、評価点のすりあわせを行います。

そしてこの作業には、二つの目的があります。一つ目は、初対面の私が、短時間で各人に下した評価内容が本当に妥当かの検証の目的です。もう一つは、診断チームメンバー達が手分けして行う、ポテンシャル評価の際の、採点基準を、メンバー各人に、差異無くインプットする目的です。

これらの準備が終わったところで、診断チームのメンバーが手分けをして、残った診断対象者たちのポテンシャル診断へと進みます。この際最初の1日は、それぞれのメンバーに私が付き添い、ヒアリングの漏れをカバーしたり、評価採点のアドバイスなどのフォローを行うようにして、よりスムーズに、各人の差異無く診断評価が行われるように手を打っております。

そして全ての作業が終了したところで、メンバー全員と私で、評価点の妥当性を再確認すると共に、個別の育成カルテ作成へと進みます。以上が、ご懸念の“人材ポテンシャル評価”作業のあらましです。

最後に一点気にかかる点があります。「とにかく覇気がありません」と言うお言葉です。行動は前向きだが単におとなしい(上司や先輩に遠慮がち)だけなのか。最初から、真剣に自社を背負おうなどという意識は、全く持ち合わせていないのか。により、育成の方法は全く変りますし、教育をしても無駄であろう対象者は、場合によっては切り捨てる厳しさも必要になります。

対象者の殆どが、後者のような者達だったら、育成の取組を行うことさえ無駄になりかねません。

私のこれまでの経験では、後者のようなケースは殆どありませんでしたが、社員を人と考えていないような企業経営を行ってきた製造業で、僅かですが遭遇しております。

この辺りは、私どもの“現状診断”で、間違いなく炙り出されるはずですので、とにかく“現状診断”を受診してくださいと申した次第です。

また、前者のようなメンバーが大多数の場合は、余り気にする必要はないと思います。各人の“育成カルテ”に、覇気を持ってそれぞれの役割に邁進できるような姿勢を持てる育成計画を、しっかり加えて置けばよいからです。