先週、某製造業に依頼されて、この7年来彼らが取り組んできた、設計改革やフロントローディング設計態勢確立の、出来映えの評価作業をしてきたので、その概要を紹介する。
本件も、これまで数件紹介してきたと同様に、その概要を公表(何処の製造業と特定されない形で)しても良いという条件で、廉価な価格でお引き受けしたコンサル案件である。
本製造業は、生産材を主力商品とし、ワールドワイドマーケットで確固たるポジションを占めている製造業である。確固たる技術基盤に基づいた多様な製品群を擁して、傍目には設計改革などに取り組まなくても良いように見える優良企業である。
検証作業内容としては、まず取組に着手しようとした動機、具体的な計画立案まで流れ、実際に取組を開始した後の進捗状況、そして現状の到達具合までを、順を追って、それぞれのタイミングで作成された資料をもとに説明を受けた。
結果的には、彼らの改革への取組内容は、私に検証を依頼しなくても良いほど、着手時点での現状把握、問題点の洗い出し、取組への優先付けなど、100点満点とは言えなくても、十分に及第点が付けられる内容であった。
また取組着手への動機は、バブル崩壊後の採用減などに起因するであろう、開発設計力の低下である。具体的には、当時頻発していた製品出荷後のクレーム問題と、開発段階で繰り返される試作修正作業と、大幅な開発期間超過問題であった。要するに、新製品を開発しても利益の出せない状況が生まれつつあったのである。
具体的な取組としては、当時既に私が各所で紹介していた、設計改革への取組内容を参考にして頂いていたので、本ホームページに掲載されている内容とほぼ同様な取組であった。具体的には、十分に伝達されていない継承技術や固有技術の形式知化、設計思考展開手法導入による論理的設計思考の定着、予測設計用雛形モデルの構築によるフロントローディング設計態勢の確立などであった。
そしてその結果、着手時点で問題になっていた、製品出荷後のクレーム問題や、開発期間大幅超過問題はほぼ解消できていた。しかし私の目から見て残念なことに、画期的に稼げる商品開発には結びついておらず、取組に対して投下したコストに対しては、十分な成果を上げたとは言えない状況であった。
すでに本ホームページでも各所で述べてきたように、このような取組には極めて大きな手間が掛る。また人手以外にも準備するツール類に投下する費用も馬鹿にならない。
そうすると投資対効果という面で見たときに、投下したコストに十分に見合う成果を得る必要がある。しかし、単にクレームコストの削減や開発コストの削減だけでは、その効果を容易くは得られない。
そして私がこれまで行ってきた取組では、必ず大幅な売り上げ増、利益増をその取組目標として設定してもらい、その目的に向かって取組に邁進して貰ってきた。本例では、残念ながらこの面での取組が抜けていたと言える。
このような取組に当たっては、画期的な商品開発の連発とまで行かなくても、コンスタントに稼げる商品開発が叶う態勢に至れなければ、フロントローディング設計への取組が巧くいったとは言えないと考える。
そしてこの製造業には、私が各所で展開してきた、商品開発着手時点でのフィジビリティースタディの採用を提案してきた。