CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

CAEの投資対効果を定量的に算出する場合に何を観測値にしたらよいのか





■質問■

<前略>

貴ホームページに掲載されている3DCAD導入における投資対効果に関するコラムを拝読して問い合わせをさせて頂きました。

WindowsXPのサポート終了を機会に、CAD及びCAE用のPC置き換えに併せて、設計者向けCAEのライセンス追加を上申したところ、却下されてしまいました。

この四月より技術本部長に付いた役員は、若い頃弊社にCAEを導入して、率先して活用されていたとの伝説を持つ人でしたので、二つ返事で増設を許して貰えると思ったのですが、予想もしなかった命令を下されてしまいました。

「過去10年間のCAEに関する投資対効果を定量的に示し、申請してきた増設が本当に効果を期待できる物なのか否か、私が理解できるよう説明しなさい。特に金額ベースで!」と言う次第です。

そこで、関係者で手分けをして、設計者向けCAE導入以前と導入後の、強度、振動、熱などCAEで予測可能な挙動に起因する、設計不具合件数の推移を調べ、大よその導入効果金額をはじき出しました。残念ながら各々の不具合に費やした損失分が明確に拾い出せなかったため、各不具合項目毎に重みを付け、その重み毎に仮の金額を設定して、おおよその数字に積上げる方式を取りました。

併せて設計者向けCAEの使用頻度の推移を調べた上で、現状では使用頻度が極めて高く、ライセンス数の制約で使えない設計者が発生しているデータも、添付して、本部長に報告を致しました。

「君たちのあげてきた数字は、あくまでも希望的な観測値であり、CAEが我が社の設計力を向上させ、いくら会社として無駄を省け、またプラス効果をどれだけ発揮できたかが、全く読み取れない数字ではないか!」「設計者達の利用頻度が高いと言っても、本当の役に立つシミュレーションを設計者達は行っているのか?」「義務的に要求されているから、ただ漫然とCAEを使っているのではないか?」などと我々の報告を全く受け付けてくれませんでした。

そこで、藁をも縋る思いで、ネットサーフィンを行っていたところ、先生のホームページに辿り着いた次第です。そして3D CADなどの道具を導入した効果は、設計の質を高め、より効率の良い、より質の高い製品開発環境を確立して、どれだけ事業利益を増やすことが出来たか否かであることも理解できました。

しかし、CAEの場合、設計全体に効果をもたらすと言うより、一部限定的にその効果が出る物だと考えます。このような場合の投資対効果は、何を観測値にしたらよいのでしょうか。

<後略>

■回答■

CAEツールだけではありませんが、特にCAEシミュレーションは、フロントローディング設計を確立する上で、必須の道具です。

そしてこのフロントローディング設計を確立できると、画期的な設計品質の向上や、設計効率の向上が実現でき、より魅力的な製品を、短期間で多品種を、市場に投入できるようになります。

さらには、マーケットクレームも大幅に減少でき、結果として大幅に事業収益の向上へと結びつくことになります。

と言うことは、CAEツールの導入効果も、まずは事業収益がその効果の観測値と言うことになります。

そしてその上で、幾つかの代表的な製品開発ケースをサンプルとして取り上げ、各々の収益にCAEがどれだけ寄与したかの寄与値を、試作段階での不具合発生の減少、市場クレームの減少などからはじき出し、これらを総計した数値が、定量的効果と言えるでしょう(様々な要因が絡み合いますので、少しどんぶり的になることはやむを得ません)。この辺りは私の持つノウハウを活用頂くのが最も近道だと思います。

一方投資側は、CAEソフトや利用するPCに費やした費用だけでは駄目です。設計者達がCAE活用を取得するまで費やした工数や、教育などに掛けた費用、サポートに費やした費用など、洗いざらいを投資側には算入する必要があります。