CAE/CAD/CAM CONSULTANT 有泉技術士事務所

QFD、タグチメソッド、TRIZを活用した製品開発品質向上に取り組んでいるがうまく行かない、設計思考展開では次の課題を解決できるか?


      課題は自由な発想の引き出し、ベテラン設計者達が持つ知恵の重ね合わせなど



■質問■

<前略>

弊社では10年以上前から、QFD、タグチメソッド、TRIZを活用した製品開発品質向上に取り組んでいるのですが、これまでの取組みを総括してみて、その効果ははかばかしくありません。

確かに
 QFDは、ユーザーニーズに応えた開発仕様の決定や品質目標の決定に効果を発揮して、安定した製品開発を実現しました。

またタグチメソッドは、バラツキを考慮した、安定した品質や物作りに繋げる設計技術を定着させました。

さらにTRIZは、既存技術を下敷きにした品質目標実現へのアプローチを、確実な物にしてくれました。

恐らく我々が扱う製品が、20年スパン以上の緩やかなテンポで、その技術革新が進んでくれる代物でしたら、上記の程度、それぞれの手法活用が叶えれば、十分成果があったと言えるかもしれません。

しかし我々の扱う製品の技術革新のテンポは極めて早く、過去の技術や情報の重ね合わせの上で統計学的に処理してゆくこれらの手法では、競合他社に打ち勝ってマーケットを押さえることが出来るような製品開発には結びつきません。

やはり、マーケットニーズを的確に読み切った、柔軟な発想を、的確且つ論理的に製品に落とし込めるような手法が必要と考えます。

このような視点で何か良い手法がないかと探し回っておりましたところ、先生がご提唱されている設計思考展開手法に行き着き、書庫にありましたご著書を熟読させていただきました。そして、恐らく私のニーズにこの手法が応えられるだろうとの確信を持ちました。

そこで質問ですが、これまで先生が手がけた設計思考展開手法活用先で、弊社のようなQFD、タグチメソッド、TRIZ利用企業はありましたでしょうか。またその際、設計思考展開手法定着までの時間はどの程度要しましたか。さらに、その際発生した課題などありましたら補足下さい。

<後略>

■回答■

拙著「設計思考展開入門」をお読みいただいたのなら、既に理解頂けていると思いますが、設計思考展開手法は、QFD手法の延長上にある手法です。

しかしQFDと決定的に異なるのは、設計者達の知恵・経験・発想を柔軟に引き出して、それを重ね合わせる“三人寄れば文殊の知恵“を実現できる、コミュニケーションツールとして昇華させたところです。

例えば商品仕様を決め込むFS(フィジビリティースタディ)段階では、商品企画・営業・設計・物作り・フィールドサービスなどの、関連する部門のベテラン〜若手メンバーが集って、各々が持つ情報や経験、さらには知恵を出し合い、参加者だれもが納得できる結論へと落とし込んでゆくコミュニケーションツールとして、設計思考展開手法を用いております。

さらにこの段階では、重要な技術的課題の解消のための知恵出しを行うのですが、TRIZと異なり、既存技術を下敷きにした知恵に止まらない、機械の原理原則、物理の法則まで立ち戻った、全く新しい発想での解消策を、参加者が持つ各々の知恵を基に、自由に提案させ、さらに参加者全員の知恵を基に、良否を判断するような関門を経て、果敢に新技術への取組みを行ってきました。

さらに一般的にはタクチメソッドが担ってきた安定した物作り部分は、頻繁に行うミニDRでも、設計思考展開シートをコミュニケーションツールとして、設計・製造の担当者レベルによる徹底したコンカレント設計を通じて、より手間を掛けず、より確実に実現をしております。

以上なような取組みで、既に20社を超える“QFD、タグチメソッド、TRIZチャレンジ企業”で、設計思考展開手法を定着させ、“稼げる商品(製品)開発”態勢確立を実現しております。これが最初の質問のお答えになります。

次の質問の所要期間ですが、製品の規模(所用開発期間・製品の複雑さ・製品の技術的難易度など)により大きく差があります。私が知る貴社規模製品ですと、完全定着まで、恐らく2年は掛らないと思います。

三番目のご質問の課題ですが、沢山あります。具体的には実際にお手伝いする際に提示させていただきますが、特に大きな問題は、QFDが持つ欠点が、本来そのような展開ルールを設けておらない設計思考展開でも、精神的制約とされてしまい、柔軟な展開を妨げる原因になっている点です。

既に拙著をお読みいただいておられますので、詳しい説明は割愛しますが、ことごとく各所でこの問題で苦しめられました。